東京都の小池百合子知事は2017年6月20日、緊急記者会見を開き、築地市場の豊洲市場に移転問題で基本方針を発表した。市場は豊洲に移転しながら、築地は5年後をめどに再開発する。
培われてきた「築地ブランド」を活用するとともに、長い目で見て「負の遺産」を将来世代に残さないためだという。ただ、築地・豊洲双方を残すことになるため、会見ではコストについての質問も出た。
「ITを活用した総合物流センター」と「食のテーマパーク」
小池知事は「築地は守る、豊洲は生かす」という方針を発表。豊洲市場は専門家会議で指摘された地下水管理システムの補強など安全対策を講じた上で生かし、羽田・成田空港に近いなどの立地条件から「ITを活用した総合物流センター」としていく。特に輸配送機能や市場外流通機能を維持・強化させるという。
築地は5年後をめどに再開発を進める。「築地ブランド」を生かし、新たな「食のテーマパーク」として東京を牽引する一大拠点にする。また、築地への復帰を希望する仲卸などの業者には、経営支援措置を検討する。ただ、築地を通る環状2号線は2020年の東京五輪前に開通させる予定で、当面は「五輪用の輸送拠点」として活用するという。
小池知事は築地再開発を決めた経緯について、「豊洲市場は6000億円かけてつくられたが、『豊洲ありき』で移転後の計画が不十分ではなかったか。築地市場跡地の売却で費用の穴埋めをする計画はあったが、移転後に生じる(豊洲市場の)年間100億円近い赤字にどう対応するのか。豊洲が老朽化し、更新する時の費用はどうするのか。今を生きる人が将来、累積する赤字『負の遺産』に向き合うことになる」と、将来世代の費用負担を懸念。豊洲に市場機能を移しながら、当初考えられていた築地跡地の売却はせず、再開発によって収益化を図る。
双方存続も、「賢い支出」によって持続可能
築地と豊洲の双方を存続させる方針だが、小池知事は「賢い支出」によって持続可能と説明。「市場の在り方戦略本部」の資料をもとに「ザックリと計算した」と小池知事が話すところによると、「豊洲移転」をして築地跡地は売却した場合、キャッシュフローの赤字が継続し、将来世代まで実質的に毎年税金で穴埋めしていくことになる。一方、今回の「築地再開発+豊洲機能強化」を進めた場合、築地の賃料・地代収入と、豊洲の機能強化による賃料改善などで、両市場合計の収支が徐々に黒字化していく。小池知事は「築地と豊洲のダブルのプラスでやっていきたい」としている。
「豊洲市場の整備でできた借金はどう返していくつもりなのか。追加でかかる税金はいくらくらいか」との質問には、「これは償還の問題が出てくるので、事務方に精査させているところ。それによって市場会計に打撃が出ることのないよう、また税金を新たに投入することのないような方策を、今検討している。さまざまな方法を考えて、ベストな、ワイズスペンディングな方法で進めていきたいと思っている」とだけ述べ、具体的な財政面の計画には言及しなかった。
また、市場機能の帰属について「将来的に市場は築地に戻るのか、豊洲は市場でなく物流センターになるのか」との記者団の質問に、小池知事は「豊洲は新たな中央卸売市場としての機能を優先させる」と明言しつつ、「さまざまな物流の変化が起きている中で、物流機能をさらに強めていきたい」「市場機能を一番確保できる方策を見出したい」などと答えた。