ヤフーは2017年6月14日、同社のサービス「Yahoo!ニュース」のコメント欄(以下、ヤフコメ)で、複数アカウントを利用して「多くの意見として印象を扇動する行為」への対応強化を公式スタッフブログ上で発表した。
従来から同様の行為は禁止されていたが、今回の対応により「『複数のアカウントを使って投稿された』とシステムによって検知されたコメントを自動的に非表示にする」としている。ヤフーの広報担当者は2017年6月19日、J-CASTニュースの取材に対し、今後も「コメント欄の健全な運営に向けた取り組みを強化してまいります」と話した。
この「取り組み」についてインターネット上では、賛否含めてさまざまな意見があがっている。
「不快な内容のコメント」への対応を強化
ヤフコメは、「ニュースを通して、みんなの意見に触れ、新たな視点を得たり、自分なりの考えを持つきっかけ」作りのために2007年から実装されている。
ヤフーによると、一日の投稿数は約14万件で、40代男性の利用が突出して多いという特徴がある(15年9月時点)。記事によっては、数千件にものぼるコメントがつくなど利用者からの支持も多い機能だが、問題も抱える。
立教大学の木村忠正教授(社会学)がYahoo!ニュースと共同で実施した調査によると、ヤフコメの特色として、「政治的左右対立」や「ナショナリズム」などへの言及が多く、なかでも中国・韓国に対し、
「(領土問題や歴史認識に関して)謝罪を求め続けられることへの強い抵抗感」
が認められたとした。
規約では、「不快な内容のコメント(わいせつ、差別など)」「宣伝行為や布教活動、抗議行動の扇動、またはそれに準じるコメント」は禁止されているが、一部の記事では違反に該当するとみられるコメントが散見され、ネット上ではそれを指摘する声もある。
ヤフーは、コメントを「24時間365日体制」でチェックする専門チームを設け、さらに「機械学習によって不適切なコメントを解析・検知」も行っている。不適切なコメントの削除や悪質ユーザーのアカウント停止、特定のユーザーを非表示にできる機能など適宜対策を講じてきた。
一方で、15年9月のヤフー公式ブログでは、
「はっきりと黒・白と線引きすることが難しいコメントについて、それらを全て削除対応とすることは、インターネット空間における『表現の自由』『思想信条の自由』を過度に制限することもつながります」
として、運営の難しさが感じられる。
そうした中で17年6月5日、「不快な内容のコメント」への対応を強化するために、短期間に同内容の投稿を検知する仕組みを導入したことを発表。14日には冒頭の施策を打ち出して対応を強化した。
「期待」の一方さらなる改善望む声も
ヤフコメをめぐっては、これまで識者がたびたび言及してきた。
ジャーナリストの津田大介氏は、17年5月26日の『週刊朝日』(朝日新聞出版)で、ヤフコメについてこう発言している。
「本来コメント欄というのは、ユーザー同士の情報交換や議論を行うために設けられているものだが、 同サイトのコメント欄は(排斥意識の強いコメントがあふれているため)お世辞にも建設的な議論の場になっているとは言いがたい 」
また、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、ニュースサイト「BLOGOS(ブロゴス)」で17年5月31日、
「日本最大のニュースサイトとして、公共性を重視しつつも、『開かれた場』というネットの理念をなんとか守ろうとしている様はよく理解できる。ウェブメディア運営者が一般ユーザーの書き込みにもはや期待をしない中、とりあえず場を残す姿勢には『あっぱれ』を入れたい。ただし、差別的な発言へのさらなる対処はお願いしたいところである」
と意見を示した。
今回の対応に、一般のネットユーザーはどう感じているのか。ツイッターやネットの掲示板では、
「ヤフコメ民の民度の低さは昔から問題ではあったがこれで少しはマシになるか」
「これで印象操作が減ることに期待」
と評価する声が挙がる一方、
「電話で認証したアカウントからしか投稿できなくすればいいだけなんだがね」
「複数アカウントで投稿する人達には、そもそもこんなことを言っても無駄だと思うの。残念ながら」
とさらなる改善を望む声も少なくなかった。