過体重や肥満の子どもは痩せている子どもに比べて学校で友達が少なく、さらに嫌われやすい傾向にある――。
ショッキングな研究結果を、米南カリフォルニア大学保健医療予防研究所のケイラ・デ・ラ・ハイ助教授らの研究チームが、2017年6月7日にオンライン医学雑誌「PLOS ONE」に発表した。
太っている子どもも太っている子どもを嫌う
研究はオランダの5都市にある中等教育(12歳以上が対象)を実施している学校から、28クラス504人の子どもを対象に、嫌いなクラスメイトと友達だと思っているクラスメイトを答えてもらうというもの。
さらに全員の身長と体重を測定し、身長の二乗を体重で割って算出するBMI(肥満指数)も調査し、人間関係の調査結果を組み合わせて関係を分析している。
すると、BMIが25以上(米国基準で過体重)の子どもは25以下の子どもに比べ「嫌いなクラスメイト」に挙げられることが1.65倍多くなっていることがわかった。さらに、過体重の子どもは、痩せている子どもから友達だと思われることが有意に少なく、調査した28クラスの約70%で、過体重の子どもの友達の数は痩せている子どもよりも少なくなっていたという。
さらに、過体重の子どもは自分と同じような太った子どもを友達だと考えておらず、痩せている子どもを友達だとする傾向にあり、むしろ嫌いなクラスメイトに挙げていた。この結果について、デ・ラ・ハイ助教授は
「肥満を個人の道徳的な問題、怠惰の結果、または意欲の欠如の結果と見なす社会的風潮が原因にある。実際には安価に大量のカロリーを摂取できる手段が構築されているためだ」
とコメントし、子どもの肥満に対する議論を慎重に考える必要があると警鐘を鳴らす。「嫌われるなどして太っていることを自覚すれば痩せようと努力するのではないか」と考えるかもしれないが、デ・ラ・ハイ助教授は「自覚すれば痩せようとする動機になるというエビデンス(科学的根拠)はない」と否定的だ。むしろより強い自己否定や自己嫌悪に陥り、外に出て運動などをすることを避け、精神的に不安定になり過食などに走る可能性もあるという。
またデ・ラ・ハイ助教授は「太っている」と思われる体重や外見の目安が年々低くなっており、40年前には「少し太っている」程度の評価だった子どもの写真を現在の子どもに見せると「太りすぎている」「肥満体だ」と評価する傾向にあると指摘。太っていることに過敏になりすぎていることにも危機感を表している。
子どもの肥満は大人の肥満につながる
とはいえ、今回発表された研究はあくまでも欧米での話。文化や考え方の違いもあるだろうし、日本でも同じ結果になるとは限らない。そもそも子どもの肥満の実態はどうなのか。
文部科学省が発表している「学校保健統計調査」の「年齢別 肥満傾向児の出現率の推移(昭和52年度~平成28年度)」を見ると、肥満の子ども(6~14歳まで)の割合のピークは2007~2008年ごろで、ここ数年はピーク時よりやや低い数値で横ばいの状態だ。
ただし、日本医師会などは子どもの肥満の発生頻度は上昇していると指摘。2014年に発表した「子どもの生活習慣病予防対策に関わる教育」の中で、子どもの肥満は解消されにくく、幼児肥満の8割は学童期も肥満のままで、学童期肥満は思春期肥満に移行し、思春期肥満の7割は成人でも肥満のまま......、と負の連鎖が続くことに危機感を募らせている。
仮に今回の研究で指摘されているような状態が大人になってもが続くようであれば、子どものころに太っていることで生涯社会的に孤立するリスクが高まりかねない。
子どもの食事や運動に気をつかうのは健康のためだけでなく、子どもの人間関係や社会生活のためでもあると言われる日は近いのかもしれない。