採用支援を行っているヒューマン・コメディ社が非行歴・犯罪歴のある人向けの求人誌『チェンジ!』を制作し、2017年7月中旬から全国の少年院や刑務所などの矯正施設で配布する。6月16日現在、同誌の掲載企業を募集している。
ただ、労働者側にとっても雇用者側にとっても、「犯罪」の二文字が落とす影は暗い。
再犯防止に力を入れる法務省 しかし...
いちど犯罪をおかした人たちが再び犯罪をしてしまう、いわゆる再犯者を減らそうという問題は、社会全体にとって大きな課題だ。ヒューマン・コメディ社は、再犯を防ぐためには刑務所を出所した人たちに仕事についてもらうのがいいとの考えから、採用支援を事業として2015年に設立された。
今回の求人誌配布については法務省と連携してはいないものの、創業の趣旨の一環として行っている。
法務省の犯罪白書によると、2011年~15年の5年間の有職者再犯率は7.7%、無職者再犯率は26.5%となっている。この数字から明らかに、有職者であることが再犯率の低下につながっていることが分かる。また、政府は14年12月16日の犯罪対策閣僚会議決定で「2020年までに、犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用している企業の数を現在の3倍にする」と数値目標を掲げている。
しかし、実態は芳しくない。それを示すのが再犯者の推移だ。最新の統計数字は2015年で11万4944人。06年から徐々に減少してはいるものの、再犯者率が上昇している。これは初犯も含めた全体の犯罪者数の減少が、再犯者数の減少よりも大きいためだ。
さきの犯罪白書の理屈でいえば、再犯者の就職がより多くなれば再犯者数が更に減り、再犯率も減っていくことになる。
ところが、実際には、犯罪者の求職活動が必ずしもうまくいっていない現実がある。法務省のデータでも、2015年度の矯正施設在所者で就労支援対象となったものが3,907人だったが、内定を獲得したのは356件。内定率で見れば約9%となっている。人手不足が叫ばれる昨今にあってこの内定率の低さは際立っている。
更に内定が出ても、労働の継続が課題になる場合もある。ヒューマン・コメディ社の担当者は「こちらが見て『大丈夫だろう』と判断した人がうまく働くことができなかったり、リタイアしてしまうケースもあったりして、一筋縄ではいかない」と述べる。
それでも「雇う」 その心は
一方、雇用者側にとっても壁は厚い。「企業様から『もし問題が起きたらそちらはどう責任を取るのか』という質問を受けることもあります」と同担当者は明かす。犯罪者を雇うことは、企業のレピュテーションリスクにも関わってくる問題だ。
法務省では、犯罪・非行者を雇用し立ち直りを助ける「協力雇用者」の登録を募っている。登録している企業は約15,000社と増加傾向にあるが、実際に雇っているのは2015年時点で788社と、約5%に過ぎない。業界なども建設業が約半分を占め、偏りが見られる。
業種のみならず企業規模にも偏りがあり、前の担当者は「人手が充足している大企業ではほとんど取組みはしていただけません。大半は中小企業です」と話す。
そんな中でも「雇いたい」と思う企業は、単なるビジネスのための労働力としてではなく、「人間力の向上」「社会貢献」という視点から人財を見ているようだ。「中には『むしろ普通のやつより根性がある』『育てがいがある』と言ってくれる企業様もいらっしゃいます。そういう寛大さ、優しさには、本当に頭が上がりません」と担当者は述べていた。