ネット通販最大手のアマゾンが2017年5月下旬、ニューヨーク・マンハッタンの大型商業施設内に全米で7つ目となる実店舗の書店をオープンし、話題を呼んでいる。
年内にマンハッタンでもう1店舗開業するほか、西海岸のカリフォルニア州などで6店舗を計画中だ。アマゾンの攻勢にさらされる既存の書店は「新たな旋風」の行方を固唾を飲んで見守っている。
かつて大手書店があった場所に
アマゾンがネット通販で販売する書籍は全米の約半数を占めるともいわれ、ガリバーと言える圧倒的な販売力を誇っている。既存書店への影響は多大で、2000年代に全米2番目の書店チェーンを展開し、約500の店を運営していたボーダーズ・グループは2011年に破綻している。
今回、アマゾンが出店した商業施設はセントラルパークに隣接した好立地のタイムワーナー・センター。高級ブランドショップや有名レストランが入り、マンハッタンでもよく知られている場所だ。ここにはボーダーズが以前、出店していただけに余計、注目を集めた。
実店舗のノウハウは2年前からスタートしたシアトルなどの先行店舗で蓄積していたようだ。置かれている本は3000タイトルほどと多くないが、ベストセラーやアマゾンの読者評で5段階の4以上の評判のよいものが並んでいる。
書店関係者が注目するのがアマゾンの注文サイトや電子書籍キンドルとの連動だ。注文サイトで3000人近くが良書と評価した歴史書を目立つ場所においているほか、「キンドルで3日以内に読める本」というコーナーもある、これはアマゾンが運営する電子書籍キンドルで購入した読者のうち、3日以内で読み終えた人が多かった実績を基にしているという。キンドルで本を読むとき、どこまで読んだかや、いつ読み終えたか気にしている人はあまりいないだろうが、アマゾンは手に入れた「ビッグデータ」をしっかり販売促進に使っている。
陳列方法にもさまざまな工夫がある。一般の書店では陳列スペースをとらないよう背表紙を見せる並べ方が多いが、アマゾンでは必ず表紙を見せる陳列方法をとった。