一昔前なら、男性が履くパンツはトランクスが「常識」だった。ところがこの10年ほどで、潮流はかなり変わって、ボクサー派が大きく勢力を伸ばしているという。
男の下着をめぐる最新情勢を、メーカー各社に尋ねた。
10年前はトランクスが半数だったが
「今の主流は、完全にボクサーですね」――J-CASTニュースの取材に、グンゼのメンズ&キッズMD部部長・南晶宏さんはそう語った。
グンゼによる購入実態調査によれば、最新の17年春夏時点の勢力図は、「ボクサー」が41%と最多なのに対し、いわゆる一般的な「トランクス(布帛トランクス)」は28%留まり。2006年時点では50%と安定多数を占めていたのが、この約10年で20ポイント近く減ったことになる。
ワコールも、ウェブサイトでの販売は「若い利用者の年齢層には、ボクサーパンツが圧倒的です」。「B.V.D.」ブランドの富士紡ホールディングス(HD)の販売実績(2016年度)でも、トランクスが約3割なのに対し、ボクサーが4割と優勢で、かつボクサー購入者の4割は20代だという。特に若い層では、ボクサーの人気はすっかり定着したようだ。
言われてみれば、記者(31歳男性)自身、いつの間にか完全にボクサーに乗り換えてしまった。「主役」はいつから交代したのだろうか。
そもそも歴史をたどれば、男性用の下着として、戦後まず普及したのはトランクスだった。1950年代に入ると、米国発のブリーフが急速に普及するが、1980年代に入ると失速、再びトランクスの時代に入る。ボクサーは90年代から登場したものの、「おしゃれ下着」というイメージが強く、主流を奪うには至っていなかった。
細身のアウター流行がボクサー後押し
そんなボクサーが勃興した原因の一つは、この10年ほど流行が続く、細身のズボン(ボトムス)だ。ワコールは以下のように分析する。
「若年層では、男性のアウタートレンドが細身のシルエットになっているせいか、『綺麗に・快適に』履けるボクサータイプが人気かと思われます。最近では身だしなみを意識する男性が増加しており、男性用化粧品が注目されていることからも、このような推測ができます」
グンゼの南さんも、「トランクスと違い、タイトなジーンズなどと合わせても中でもたつかない」ボクサーの特性が、人気の一因だと話す。また、日本人は肌着への関心が総じて高い傾向があり、だからこそ流行の変化にも積極的に対応した、という側面もあるという。
おじさんはまだまだトランクス?それともボクサーへ移行?
一方、「おじさん」たちのボクサー受容については、メーカーごとにやや見方が分かれた。
ワコールがスーパーなどチェーンストア向けに展開する「BROS」シリーズの売れ行きは、今なおトランクス(特にニット生地)が上位を占めているという。チェーンストアでの購入の60~70%は代理購買、つまり家族(=多くは妻、母親)が代わりに買ってくる形だといい、それもあって「比較的年齢層が高い層に人気のあるトランクス」が今も地位を守っているのでは、というのがワコールの見立てだ。またウェブ通販でも、40代以上はトランクスが売れ筋だという。
対してグンゼは、「おじさん」たちにもボクサーが浸透しつつあると見る。直近の調査では40代の49%、50代の43%、60代の40%がボクサー派だという。
「推測ですが、特に50代以上の方は、若いときブリーフを履いていた世代です。ブリーフの着用感と、トランクスのようなカッコよさのあるボクサーの存在に気が付き、徐々にスイッチしているのではないかと思います」(前述の南さん)
いずれにせよ、勢いはボクサーが優勢。パンツといえばボクサー、という時代も遠からず訪れそうだが、南さんは、「実は10代の一部には、トランクスに戻る傾向があるんですよ」と明かす。
「10代にとって、ボクサーは自分の父親世代が履いているもの。『自分のオヤジが着ているものは着たくない』という感情が、男にはあるんですよね......」
そのうち、ボクサーもおじさんのパンツに?