「儲け口」を失う地銀
とはいえ、金融庁のアパート融資への監視強化に困惑しているのは、当の地方銀行かもしれない。
金融庁の森信親長官は2015年7月の就任当初から、「事業性評価に基づいて融資を伸ばしてください」と地方銀行に向けて要望してきた。旧態依然とした、決算書とにらめっこしただけで判断しておカネを貸すような企業融資のスタイルではなく、事業の新規性や成長性、技術力などを評価して判断してほしい。もっと簡単にいえば、現金を持っている優良企業だけでなく、本当におカネを必要としている企業への融資に振り向けなさい、ということだ。
そういうと、地銀は「そんなことはやっている」と反論するだろうが、その融資先が現状はアパートローンというわけだ。つまり銀行のいう「おカネを必要としている先」は「貸しやすい先」なのだ。
企業アナリストで、大手地銀で支店長を務めた経験がある大関暁夫氏は、「いまのアパートローンは、本来いらない人にアパートを建てさせるためにおカネを貸すのですから、金融庁にすれば、目先の収益確保のための延命策にしか見えません。森長官にすれば、『どうもわかっていないな』という感じなのでしょう。任期も残り1年であることを考えると、地銀で事業性評価に基づく融資が育っていない現状から、とにかく前進させようという強い意思表示のようなものがうかがえます」と話す。
地銀にしてみれば、ようやく見つけた「儲け口」をもがれ、企業融資を伸ばさないことには生き残りにもかかわる。金融庁はそうやって追い込み、その先の再編へと落とし込むことを描いているのかもしれない。