一人旅を楽しむ人が増えている。航空券からホテルまですべてを自分で手配する完全な個人旅行をはじめ、旅行会社が「おひとり旅プラン」「シングルツアー」などと銘打った旅行商品を続々と売り出し、利用者も増えているというのだ。その背景には『イマドキ』の事情もありそうだ。
旅行会社のJTBが2017年6月6日に発表した「ひとり旅に関するアンケート調査」(約2800人の男女対象)によれば、一人旅を経験したことがあるとの回答は60%に上り、年代や性別にかかわりなく広がっていることが分かった。さらに、経験がない人のうち65%が「今後は一人旅をしてみたい」と回答した。
スマホ・SNSが後押し
JTBは、別の同社調査(2016年の「日本人海外旅行のすべて」)で、一人旅が過去最高の結果となったことも踏まえ、「家族や友人との旅行が減少する中、特に、海外への一人旅は増加傾向にある」と見ている。
一人旅が増えている理由は何か。JTBのアンケート調査では一人旅をした理由として、「自由で気楽な旅がしたかったから」が42%で最も多く、「ひとりで旅行するのが好きだから」(18%)と続いた。同行者がいないなどの消極的な理由というより、自らすすんで一人で旅をしたいという積極姿勢が大きいようだ。
スマートフォンとSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が、一人旅のそんな傾向を加速しているという指摘は多い。ある旅行業界関係者は「スマホとSNSが、一人旅を後押しする重要なツールになっている」と話す。一人旅は、慣れない場所で食事を一人でとらなければいけなかったり、景色に感動しても思いを誰とも分かち合えなかったりするなど、さみしい思いをしがちなことがネックとされてきた。しかし、スマホからSNSに写真やコメントを投稿すれば、世界中どこにいてもすぐに「いいね」の返答が返ってくるなどし、一人でいても淋しさを味わわないですむという。
さらに、「そうした投稿を見た人が、今度は自分が一人で旅をして投稿したいと考えるようになり、一人旅がじわじわ広がっているのです」と前述の関係者は分析する。
添乗員付きの「シングルツアー」も
こうした傾向を受け、旅行会社は滞在先でフリータイムをたくさん設けたり、移動や食事の時だけ参加者が一か所に集まればよいとしたりするような一人向けツアーを次々と発売している。最低限の事務的な手伝いをする添乗員付きの「シングルツアー」も珍しくない。「海外では、まったく一人きりで動くことに不安を感じる人も少なくなく、そういう人が一人旅用ツアーを使うケースが増えている」とある旅行会社の社員は話す。
国内旅行でも、従来は女性一人では受け入れなかった旅館が、受け入れ可能に方針を変える例も増えていて、旅行会社は一人旅用ツアーを作りやすくなっているのだという。
今後も多彩な個人旅行が広がっていく可能性が大きい。