安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」が国家戦略特区で獣医学部を新設しようとしている計画をめぐり、新設の条件を「加計ありき」で修正するように萩生田光一・官房副長官が指示したのを伺わせる内容のメールが内閣府から文部科学省へ送信されていたと、文科省・内閣府のいずれもそれぞれの調査で認めた。
萩生田氏は指示を否定し、国家戦略特区を所管する山本幸三・地方創生相も内閣府の調査結果を公表した2017年6月16日午前の閣議後会見で、修正の指示を出したのは山本氏自身であり、このメールを送信した内閣府職員が「事実関係を確認しないまま発信した」と述べている。
「官邸の萩生田副長官からあったようです」と書かれたメール
加計学園の獣医学部新設計画は、「官邸の最高レベルが言っている」「これは総理のご意向」などと、早期の開設を促したとされる文書・メールを文科省と内閣府が共有していたと指摘があり、文科省は5月に続いて6月に実施した「追加調査」の結果、これらを含む文書・メールの存在を確認したと6月15日に発表した。
追加調査では、萩生田氏の指示で獣医学部の新設を認可する条件が修正されたと伺わせる文書・メールが内閣府職員から文科省職員に届いていたことも確認された。まず、当初の条件が書かれた文書では
「獣医師系養成大学等のない地域において獣医学部の新設を可能とする」
とされていたのが、修正後の文書には
「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」
と手書きで「広域的に」「限り」の文言が書き加えられている。
さらに、この修正後の文書を内閣府職員が文科省職員へ16年11月1日付で送信したメールには、修正の指示について「(編注:内閣府の)藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」と記載されている。そしてこの修正内容は、8日後の16年11月9日、国家戦略特区諮問会議(議長・安倍首相)で決定した方針に盛り込まれた。
獣医学部はかねてから京都産業大学が京都府綾部市で新設を計画していたが、同じ近畿地方の大阪府立大学に獣医学部がすでに存在しており断念することになった。一方、加計学園は愛媛県今治市で新設をめざしており、四国地方には獣医学部がないため条件に合致している。そのため、条件の修正は「加計学園ありきで決められたのではないか」との指摘が出ている。
山本氏「内閣府の担当者が事実関係を確認しないままメールを発信」
文科省による追加調査の結果発表を受け、内閣府でもこれらの文書・メールの存否と内容の真偽について改めて調査を実施し、山本幸三・地方創生担当相が16日午前の閣議後の会見でその結果を公表。萩生田氏から指示があった旨が書かれたメールが内閣府から文科省へ送信されていた事実は確認されたとする一方、「手書きの修正」について指示をしたのは山本氏自身であり、「私が『広域的に』と書いた」として萩生田氏の関与を否定した。メールを送信した職員については「担当者から伝え聞いた曖昧な内容であって、事実関係を確認しないまま発信したと認めている」と説明した。
また、萩生田氏も16日午前の参院内閣委員会で「修正の指示を出したことはない。メールの内容は戸惑いを感じる」と述べていた。
これら文科省と内閣府双方の調査結果を見ると、獣医学部の新設条件の修正を萩生田氏が指示したと明記されたメール自体は存在するものの、その内容の真偽が定かではない。
菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で、「後付けで山本大臣が言ったことにしたように聞こえる。加計学園の議論がどうあったか、当時の資料など客観的な証拠を出すべきではないか」との質問に対し、「必要なら当然そうするだろうと思う。(内閣府の調査結果は)今日発表されたばかりなので、詳細は(内閣府の事務方から)説明があると聞いている」と述べるにとどめた。また、「萩生田氏や藤原審議官は実際にどのような指示を出したのか」との質問には「内閣府の調査の中で対応すること。少なくとも萩生田副長官についてはそういうことはないということだ」と答えている。