臓器のなかで肝臓は基礎代謝の25%を担当し、摂取したアルコールの90%を処理するほか、そのほかの解毒も行っている。働きが活発なだけに疾患のリスクが高いといえる。日本ばかりでなく世界各国で肝疾患は主要な死亡原因になっている。
このほどオランダの研究グループが発表した報告によると、約2400人を対象にした調査の結果、慢性肝炎や肝硬変はコーヒーやお茶を飲むことで予防できることが分かったという。
「ロッテルダム研究」研究使い分析
調査を行ったのは、オランダ・ロッテルダムにあるエラスムス大学医療センターの肝臓専門医、サーワ・ダーウィッシュ・ムラド博士率いる研究グループ。肝臓学の国際科学誌「ジャーナル・オブ・ヘパトロジー」に2017年6月1日付で発表した。
ムラド博士は「これまでにもコーヒーが肝臓の疾患に効果があることを示す実験的なデータはあったが、わたしたちが関心を持ったのは、疾患に関係なくコーヒーが肝臓の硬化に影響があるのかということだった」という。肝臓の硬化は、構造の破壊により瘢痕(はんこん)化(線維症化)して高まる。これを見逃すと、慢性肝炎や肝硬変になるという。
研究グループはそれを調べるために、著名なコホート研究「ロッテルダム研究」を用いた。研究グループが対象にしたのは、ロッテルダム在住、45歳以上2424人のデータで、体格指数(BMI)や血液検査のほか、肝臓の様子が分かる腹部検査などの項目が備えられていた。飲食の習慣を評価するための「食事摂取頻度調査票」もあり、そのなかには、コーヒーやお茶の種類別飲用を含み回答項目は389あった。
調べにより分かったのは、肝臓を守るためにはシンプルにコーヒーブレイク、ティータイムをとるようにすればよいことだという。
肝臓線維症を予防する可能性
研究では、2424人をコーヒーとお茶の飲用パターンで3つのカテゴリーに分類。飲用なし、中程度の量の飲用(1日3杯未満)、高頻度の飲用(1日3杯以上)に分けた。お茶は種類別に、緑茶、紅茶、ハーブティーに分けて分析。さらに、回帰分析の手法を使って、コーヒーとお茶の摂取と、肝臓の線維症の進行との関係を研究。その上に、年齢、性別、BMI、喫煙、アルコール摂取のほか、運動や食事のパターンを採り入れて結論をまとめたという。
それにより分かったことは、コーヒーやハーブティーを摂取する頻度が高いことは一貫して、肝臓の硬化のリスクが有意に低いことと相互に関連していることだった。このことはライフスタイルやBMIとは関係がなかったという。
肝臓の硬化に対するコーヒーやお茶の効果は、脂肪肝の人にも、そうではない人にも同じく現れており、コーヒーやお茶の飲用は肝臓線維症を予防する可能性があるとしている。
肝臓が原因の死は、しばしば肝硬変が高じたものよる場合が多い。肝硬変は長期にわたるアルコール摂取よることが要因とされるが、非アルコール性脂肪性肝炎も肝硬変になる可能性があるという。