自治体の指導も後手に
報告書には他にもさまざまな調査内容が書かれている。無届け施設の8割以上は株式会社や有限会社によって運営されており、施設の建物や土地は賃貸となっているところが多い。使用している建物は2010年以降に建築された戸建て住宅が多く、居住面積は1人あたり13平方メートルと、有料老人ホームの標準指導指針に示された最低面積基準ギリギリだ。
火災報知機やスプリンクラー、耐震構造など防災上の設備はほぼすべての施設が用意していると回答しており、今回の調査ではハード面で問題があるという施設は少ない。前述の取材に答えた介護事業者は、
「無届け施設が悪徳事業者というわけでもありません。有料老人ホームとしての要件をあと少しで満たすことができず、仕方なく無届けで運営しているという施設もあります。とはいえ玉石混合であることも確かなので、注意する必要があるのですが」
と指摘する。
しかし、入居者の状況を見ると「大半が自立している」と回答したのは10施設のみで、「要介護1~2が大半」は59施設、「要介護3以上」も43施設、「自立から重度者までさまざま」が77施設。さらに認知症患者は8割以上の施設におり、医療的ケアが必要な入居者も3割以上の施設に存在していた。
高齢者住宅財団や厚労省は未届け有料老人ホームに届け出を行うよう指導の必要があるとしているが、105か所の自治体を対象にした調査では「未届け施設に指導は行っていない」「公表していない」「存在を把握してない」との回答もあり、対応は進んでいない。