一円、五円、十円、五十円、百円、五百円。よろしければ、財布から取り出して見比べてほしい。6種類の現行硬貨の中で、ほかにはあって、五円玉だけには「ない」要素がある。
答えは、「アラビア数字(算用数字)」だ。ほかの硬貨には額面がアラビア数字で刻印されている(漢数字も表面にある)のに対し、五円硬貨だけは表面に「五円」と漢字表記があるのみで、裏面にも記載がない。
ツイッターでの指摘きっかけに話題に
もちろん、それは今に始まった話ではないのだが、ツイッターで2017年6月10日、あるユーザーが、外国人客がレジで五円玉がいくらなのかがわからず、戸惑っていた――という目撃談を投稿、これが2万回近くリツイートされたことで、にわかに話題を呼んでいる。
「言われてみれば確かに」
「ほんとだ...漢数字表記は五円玉だけなのけ...」
「そっか五円玉だけ『5』って書いてないんだ」
といった驚きの反応に加え、
「あ、このせいで俺バスんなかで外国人からHow much?って五円玉見せられたのか」
「去年の三月、ヨドバシAKIBAのベンチでアジア系っぽい外国人の兄ちゃんから『これはいくらですか?』と五円玉を出されて訊ねられたわ」
と、投稿者と同じ体験をしたという声も少なからず上がる。確かに、漢字がわからない外国人観光客には、五円玉がいくらなのか判断する材料はない。中には、「変えたほうがいいねオリンピックまでに」などと、「改鋳」の必要性に言及するツイートも見られた。
デザインに隠された意味とは?
そもそも現在の五円玉こと五円硬貨は、戦後間もない1949年に誕生した。描かれている稲穂は農業、中央の穴の周りについたギザギザは歯車=工業、そして「五円」の文字の後ろにある横線は水面=漁業と、当時の主要な産業をそれぞれ象徴、さらに裏面に2つ描かれた双葉マークには、戦後日本の成長への思いが託されている。なお、1958年以前のものは、文字が楷書体だ。
造幣局広報室に尋ねてみると、五円玉のデザインを決める際には、いくつかの案が作られ、それを元に議論して決定した。その際の採用案が当初から「漢字のみ」のデザインで、それを特に手直ししないまま正式決定となったのだという。
「当時、ほかにアラビア数字の案があったかはわかりません」(広報室担当者)
戦前の硬貨には漢数字のみのものも少なくなく、当時は「アラビア数字を入れるべき」という発想がなかったのかもしれない。
では、上記にあるように、外国人に配慮してデザインを変更する、という可能性はあるだろうか。
「そういった声がまったくないわけではありませんが、貨幣の仕様を変更するというのはとても大変なことです。特に今は、自動販売機などがこれだけ普及していますから......。前回、五百円硬貨を変更した際(2000年)は、変造硬貨への対策という理由がありましたが、そういった大きな問題がないと、変更というのは難しいと思います」
ちなみに、五円玉はキレイな金色、海外では珍しい「穴あき」デザインということもあり、外国人の中には「おみやげ」として喜ぶ人もあるとか。いずれにせよ、当面「漢字だけ」の五円玉が消えることはなさそうだ。