デザインに隠された意味とは?
そもそも現在の五円玉こと五円硬貨は、戦後間もない1949年に誕生した。描かれている稲穂は農業、中央の穴の周りについたギザギザは歯車=工業、そして「五円」の文字の後ろにある横線は水面=漁業と、当時の主要な産業をそれぞれ象徴、さらに裏面に2つ描かれた双葉マークには、戦後日本の成長への思いが託されている。なお、1958年以前のものは、文字が楷書体だ。
造幣局広報室に尋ねてみると、五円玉のデザインを決める際には、いくつかの案が作られ、それを元に議論して決定した。その際の採用案が当初から「漢字のみ」のデザインで、それを特に手直ししないまま正式決定となったのだという。
「当時、ほかにアラビア数字の案があったかはわかりません」(広報室担当者)
戦前の硬貨には漢数字のみのものも少なくなく、当時は「アラビア数字を入れるべき」という発想がなかったのかもしれない。
では、上記にあるように、外国人に配慮してデザインを変更する、という可能性はあるだろうか。
「そういった声がまったくないわけではありませんが、貨幣の仕様を変更するというのはとても大変なことです。特に今は、自動販売機などがこれだけ普及していますから......。前回、五百円硬貨を変更した際(2000年)は、変造硬貨への対策という理由がありましたが、そういった大きな問題がないと、変更というのは難しいと思います」
ちなみに、五円玉はキレイな金色、海外では珍しい「穴あき」デザインということもあり、外国人の中には「おみやげ」として喜ぶ人もあるとか。いずれにせよ、当面「漢字だけ」の五円玉が消えることはなさそうだ。