犬を飼うことの健康効果はこれまでに数々示されてきたが、このほど発表され研究報告は、犬の飼っている人と飼っていない人の実際の動きを測り、その効果をより具体的にあらわすことに成功した。
研究者らは、犬が身近にいることの効果の大きさから、高齢者らが共同で飼うことなども考えてよいのではないかと提案している。
飼い主と飼ってない人の生活をモニター
報告を行ったのは、英スコットランドにあるグラスゴー・カレドニアン大学の上席研究員、フィリパ・ドール氏らの研究グループ。査読付きオープンアクセスジャーナルの世界最大出版社とされる英バイオメド・セントラルの「BMC Public Health」に2017年6月9日付で発表された。
研究では、いずれも65歳以上の、犬の飼い主とそうではない人それぞれ43人ずつに13年から14年の間に、1週間のモニター期間を3回提供してもらった。モニター期間中、姿勢などの情報を収集できる活動量計を着けてもらい、ふだんの生活のなかでの活動を評価した。
活動量計は英パルテクノロジーズの「アクティブパル」という製品で、重力加速度を使って、立っている時、座っている時、横になっている時を区別して測定することができる。
研究グループは歩行時間、立っている時間、座っている時間のほか、それぞれの姿勢の持続時間や座る回数などを査定した。
そうして得られた結果によると、犬の飼い主は、飼っていない人より平均で1日あたり22分長く、また、2760歩多く歩いていたことが分かった。
共同で飼うことも
また、犬を飼っている人たちと、飼っていない人たちの間で、座っているトータルの時間にほとんど変わりはないのだが、犬を飼っている人たちはしばらく座り続けることがほとんどなく、動きにメリハリがうかがわれる。
世界保健機関(WHO)は、65歳以上の成人に対して「週150分以上の中程度の運動」(あるいは「同75分以上の強度の運動」)を推奨している。これを単純に1日あたりにすると20分強。犬を飼っている人たちは、飼っていない人を上回る分だけで、このWHOの推奨レベルを満たしていることになる。
ウオーキングなどの身体的活動を規則的に行うことで、心血管系の疾患や糖尿病、一定種類のがん、うつ病などのリスクを軽減する可能性があるとされる。
これまでにも、犬を飼っていることで高齢者の身体活動が向上させる可能性があることを示す報告が行われてきたが、いずれもアンケートなどでの自己申告や、完全とはいえないデータにもとづくものだった。
今回の報告を行った研究者らは、調査で得られた結果をベースに、健康の専門家らが、シニア層にさらに身体的活動にかかわるようにするため、犬を飼うこと、あるいは共同で飼うことを普及させるよう提案している。