スラミンの安全性は未知数
ナビオー教授らの分析によると、スラミンは細胞の異常な反応を引き起こしている物質が機能しないよう作用しており、これによって正常な神経伝達ができる状態になっていることが確認された。ただし、この細胞の異常反応だけが自閉症の原因ではなく、遺伝や環境要因などが複雑に影響していると考えられるため、ナビオー教授も「スラミンが唯一絶対的な治療薬ではない」と断言している。
またスラミンの効果は一時的で、投与から数週間で改善効果は完全に消えてしまったという。その他にも、スラミンは長期間大量に投与し続けると吐き気や腹痛、低血圧、腎臓障害などの重い副作用が起きることが確認されており、自閉症の治療のために長期間複数回投与することが安全なのかは大規模な追跡調査を実施しなければわからない状態だ。
そもそも米国食品医薬品局は米国内でスラミンを治療に用いることを承認しておらず、購入もできない。今回発表された論文でも、重要な注意事項として「スラミンには予測できない毒性や副作用があり、研究以外で使用することは禁忌である」と明記されている。
ナビオー教授らは現在スラミンのさらなる有効性検証を進めるとともに、スラミン以外の薬で同様の効果を発揮するものがないかも探索し、新薬開発に向けて研究を進めているという。