「不安な個人、立ちすくむ国家」で指摘 定年退職後、元気な男たちの無為の日々

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   経済産業省の若手官僚が中心となってまとめた報告書が、インターネット上で話題となっている。日本社会の現状分析と改革の提言が盛り込まれているが、その中のひとつに高齢者が直面している厳しい現実の指摘がある。

   定年退職後も健康で勤労意欲が高いのに、働ける場所がない。時間を持て余した男たちは、テレビばかりを見て1日を過ごす――。あなたの周りにも、こんな夫、父親がいないだろうか。

  • 本当はもっと働きたいのに(写真はイメージ)
    本当はもっと働きたいのに(写真はイメージ)
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60歳以上の7割超が仕事も地域活動もしていない

   「不安な個人、立ちすくむ国家」と題した報告書は2017年5月、ネット上に公開された。20~30代の経産省職員30人がまとめ、17年6月13日付の朝日新聞朝刊によると、延べ120万人以上がダウンロードしたという。

「多くの人が健康で長生きする現代。にもかかわらず、60歳半ばで社会とのつながりが急速に失われる暮らし。そんな暮らしを多くの人が望んでいるだろうか?」

   報告書のなかで、このような問いかけがある。日本人の健康寿命は74.9歳で、65歳で定年した後でも10年近く元気でいられる。これは英米やドイツと比べて長い年数だ。しかも、高齢者の体力・運動能力の推移をみると、今の70代前半の人は14年前の60代後半と同じ能力に「若返り」を果たしている。

   60歳以上の人に「何歳まで働きたいか」をたずねた調査では、25%が「働けるうちはいくらでも」と年齢に関係なく労働への意欲の高さをみせた。また、働きたいと考えている割合は6割以上に上った。

   ところが、60歳以上で「会社の常勤・顧問等」となっているのは10.2%。パートでも16.0%で、全体の7割以上が仕事をしていない。地域の活動についても、約7割が「していない」だ。

   やる気があり、健康状態も良好な定年後の人が「何もやることがない」状況になったら、どうやって過ごすのか。資料はさらに、「60代前半無業者(男性)の平日」をグラフ化して示している。

   40代男性なら仕事の時間に当てているケースが多い朝9時から19時ごろまでを見ると、60代前半男性で最も多いのが「テレビ」だ。午前中から昼食をはさんで午後も、テレビの時間帯が「趣味」「買い物」「家事」をリードしている。時間を持て余し、自宅でテレビを見ながら過ごす姿を思い起こさせる。

家に引きこもる夫は妻の健康をも害する

   男性の定年後の暮らしに関する議論は、今に始まったことではない。ネットの質問投稿サイトを見ると、「定年退職後、夫がいつも家にいてウンザリ」「父が家でぶらぶらしていてイライラ」といった悩みが寄せられている。グーグルで「定年、男」と検索すると、関連キーワードとして「定年後、やることがない」「定年後、テレビばかり」と表示される始末だ。

   家に引きこもる夫は、妻の健康をも害する。J-CASTヘルスケアは2016年2月10日付で、「旦那長生きで妻の死亡リスク倍増 鈍感な夫の日々の行動がストレスに」という記事を公開した。大阪樟蔭女子大教授の石蔵文信氏が、「夫源(ふげん)病」と名付けた。石蔵氏の著書「妻の病気の9割は夫がつくる」などによると、夫のささいな日常行動で妻のストレスが増していくという。例えば、「妻が食事の準備をしているのに、テレビを見ながら晩酌中の夫が、やれ『リモコンだ、つまみだ』とちょっと手を伸ばせばすむことを要求する」といった具合だ。ストレスがかかり続けると、妻はやがて自律神経が暴走し、更年期障害と似た症状が出てくる。

   先述の「不安な個人、立ちすくむ国家」には、定年後の生きがいについてのデータもある。仕事をしていない高齢者で「生きがいを全く感じていない」「生きがいをあまり感じていない」と答えた割合は23.1%だったのに対して、会社の常勤・顧問等で働いている人は11.3%と半分以下だった。エネルギーたっぷりなのに発散しようのないシニア男性たちが、腕を振るう場がなく途方に暮れている。

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