全国で給油所の減少が進んでいる。特に過疎地は店舗の有無が地域生活に与える影響が大きいだけに事態は深刻だ。ガソリン需要は長期低落傾向にあり、今後も販売量が増加に転じる見込みはなく、給油所減少にも歯止めはかかりそうにない。
経済産業省の調査によると、全国の給油所数は1994年度末の6万421店をピークに21年連続で減少し、2015年度末は3万2333店とほぼ半減した。これだけ急減した理由は「人口減少に加えて燃費性能の高い自動車が普及し、ガソリン販売量が年々落ち込んでいるから」(経産省)という。これからもガソリン販売量は年平均で2.2%減少する見込みで、給油所減少に歯止めをかけるのは容易ではない。
「3か所以下」の自治体、調査開始から毎年増加
ガソリンは差別化が困難な商品であり、給油所間の価格競争は激しく、収益を悪化させた経営者は廃業や撤退に追い込まれている。特に人口減少の著しい地域の給油所は、都市部よりも販売量が少ないため経営は厳しく、突然閉店することも珍しくはない。それが地域に唯一の給油所だったりすると、住民の重要な足である車への給油、移動手段のない高齢者への灯油配送などにも支障を来す恐れがある。
そこで経産省は2013年度から過疎地の給油所事情の調査に乗り出した。その結果、給油所が3か所以下しかない市町村数が2017年3月末で302市町村に上ることが判明。こうした市町村は「給油所過疎地」と定義されており、前年度から14市町村も増加。この302市町村のうち、給油所が「0か所」というのが青森県西目屋村や大阪府豊能町、鹿児島県三島村など12町村あり、ほかに1か所のみが75町村、2か所あるのは101市町村、3か所が114市町村だった。調査開始から毎年増加しており、「給油所過疎地にどう向き合うかが大きな課題」(経産省)となっている。
「廃業を考えている」も1割近く
一方、給油所過疎地の市町村にある1436店を対象にしたアンケート(72%が回答)では、9%が「廃業を考えている」と答えた。「未定」も19%あった一方、「継続する」は72%にとどまる。経営課題は、販売量減少や従業員確保の難しさ、後継者不足、施設の老朽化などだった。
このまま何も手を打たなければ、給油所過疎地の給油所は減少し続ける可能性が大きく、災害時などの燃料供給にも支障が出る懸念がある。
そのため経産省は5月末に自治体自らが給油所経営に乗り出すよう求めるなどした。しかし、業界関係者からは「過疎地の自治体ほど財政状況は厳しく、国の支援がなければ自ら経営に関与するのは難しい」「国が給油所をどうしたいのか具体像が見えてこない」などといった指摘も出ており、自治体や地域、石油業界を巻き込んで対応策を作り上げられるかは不透明な状況だ。