2030年のサッカーワールドカップ(W杯)を日本・韓国・中国・北朝鮮の4か国で共催する構想を、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が提案した。
提案を受けたW杯を主催する国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長は「大統領のビジョンを歓迎する」と答えたのだが...。
日本や中国は単独開催を目指している
2017年6月12日付の韓国メディア「聯合ニュース」によると、文大統領は同日、U-20(20歳以下)W杯が11日まで開かれていた韓国を訪れていたインファンティーノ会長と会談。2030年W杯を4か国で共催する考えを伝えた。文大統領は「南北を含む北東アジアの隣国と共にワールドカップを開催できれば南北や北東アジア平和に役立つと思う」。これに対し、インファンティーノ会長は「文大統領のビジョンを歓迎する。現実的に困難があるが、信頼を持って努力することが重要であり、こうしたビジョンを発信するだけで強力なメッセージになる」と応じたという。
これに先立つ5月14日には、大韓サッカー協会の鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長が「韓国、中国、日本、そして北朝鮮が緊密に話し合えば、2030年W杯共催の可能性は高いと思う」「(3国とは)まだ話し合いをしていないが、機会があれば今後するだろう」と述べていた。チョン会長は3月にも4か国共催構想を提示している。
それと同内容を大統領が発言したわけだが、課題が多い点も聯合ニュースは指摘。習近平国家主席が国策でサッカー強化に乗り出している中国は単独開催を目指しており、日本も日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長が2050年までの単独開催を目標としているとした。また。北朝鮮は17年だけで10回に及ぶミサイル実験や核開発で国際社会から厳しい目を向けられている点も共催の障害になると伝えている。
日本のツイッター上ではこの話題が出るたびに反発の向きが強く、「日本は単独でできるんだよ...」「絶対反対」などの声があがった。また、5月31日にアジアチャンピオンズリーグ(ACL)で韓国の済州ユナイテッドが、対戦した浦和レッズを相手に前代未聞の暴力行為をはたらき、アジアサッカー連盟(AFC)から複数の選手に出場停止や罰金処分が下されたばかりという時期もあり、「済州の件が絶賛炎上中のこのタイミングでこの提案かよ」「W杯4か国開催にお断りします。済州からの公式謝罪を求める」といった投稿も少なくなかった。
「文大統領は北との対話にオープンな姿勢。しかし...」
この会談の内容はサッカーに関心が高い欧州メディアも報じた。英紙「テレグラフ」は12日「インファンティーノ会長は、今週末に会う中国の習近平国家主席に、文大統領の考えを打診するつもりだ」とし、緊迫する東アジアの平和に貢献すると考える文大統領は「私はインファンティーノ会長にこの問題に関心を持ってもらいたい」と述べていたという。
韓国と北朝鮮の関係が共催の障壁になり得るという見方もある。英紙「ガーディアン」は12日、「文大統領は5月に就任して以来、北朝鮮との深い対話にオープンな姿勢をとっている」としつつ「しかし北朝鮮はこれに応じる構えを見せておらず、代わりに、国際的な制裁措置に反して前例のないペースでのミサイル発射実験を繰り返している」と南北朝鮮関係を懸念。さらに、「文大統領が国境を越えて交流しようとする試みは、韓国・ソウルの市民団体が救援物資を送ろうとする申し出を北朝鮮が断ったことで、見通しが悪くなった」としている。
英タブロイド紙「メトロ」も南北朝鮮の関係について触れ、「両国の関係を考えれば、この提案が実現すれば驚くべき成果となる」としつつ、北朝鮮について「この悪名高い秘密主義国家にファンや競技者がどのようにして行くかは、克服すべき大きなハードルの1つとなりそうだ」と辛らつな表現を用いた。