安倍晋三首相の特使として韓国を訪れている自民党の二階俊博幹事長の発言が、韓国で警戒されている。日韓関係の改善を妨げるような動きが一部に存在するとして、そういった勢力の「撲滅」を呼びかけたが、日韓双方では、違った受け止められ方もされている。
発言は、いわゆる「二階節」のひとつだとも言えるが、日本では、いわゆる「嫌韓派」から批判を浴びる一方、韓国では、慰安婦をめぐる日韓合意の再交渉を求める勢力も「撲滅」の対象だと受け止める向きもある。
「二階節」のはずだったが...
二階氏は10日から14日にかけて韓国に滞在予定。韓国到着直後の10日に南西部の木浦(モッポ)にある「金大中ノーベル平和賞記念館」で行った演説で、日韓両国を「遠い位置づけ」に持っていこうとする勢力が日韓両国に少数ながら存在すると指摘した上で、
「一握りの悪巧みをする連中は撲滅をしていくようにしましょう」
と述べ、日韓友好を訴えた。日韓議員連盟の常任幹事でもある二階氏が、日韓の対立をいたずらに煽る動きを牽制したとも受け取れる。
韓国に批判的な論調が多い産経新聞は、今回の発言については「『二階節』で友好を呼びかけた」と淡々と伝えたが、ツイッターではこうした記事に対して
「『日韓を近づける悪巧みは撲滅』!!せよ!」
「南朝鮮と友好だあ?」
などと、いわゆる嫌韓派とみられる人たちから二階氏の発言を批判する声が寄せられた。
一方、批判の声は、別の角度で韓国側からも上がっている。
二階氏は訪韓前日の9日に韓国・SBSテレビが行ったインタビューに対して、
「話し合って解決して、こっちはお金も払って、その後ね、また一から再交渉だなんて、そんなバカなこと言ったって、国際的に通用しないですよ」
などと日韓合意の「再交渉論」を一蹴。二階氏は安倍首相の親書を携えて文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談が予定されていたことから、発言は安倍首相の意向を代弁していると受け止められた。その直後に「撲滅」発言が出たことで、韓国側を刺激したようだ。
ハンギョレ新聞は、二階氏が「相次いで卑劣な言葉を吐き出した」と非難。
「彼のこのような発言は、(慰安婦の)12・28合意をめぐる両国間の緊張が高まった状況で出てきたものであり、目を引く」
と指摘した。