「公明党は変わり身が早い」
――都民ファが公明党や協力勢力と合わせて過半数を取れたら、小池知事の都政は安泰ですか。
猪瀬氏 ただ、なるべく都民ファ単独で議席を多く確保したい。公明党がいつどう動くか分からないからです。公明党は都議会でも自民党と連立していましたが、16年の都知事選後、「どうも小池知事の方が優勢だな」となったら小池知事側につきました。都議選後、小池知事が劣勢になればまた自民党都連とくっつく可能性はあります。
16年6月に舛添知事が辞める時もそうです。このままでは7月の参院選が危ないと思った公明党が、それまで支持していた舛添知事に引導を渡しました。自民党都連の内田氏は当時、まだ舛添氏に続けてもらおうと考えていました。そういう点で公明党は変わり身が早い。
また、この都議選は基本的には「小池選挙」です。16年の都知事選と同じ「自民党都連VS小池氏」という図式があります。都民ファはある意味「寄せ集め」ですが、「風」つまり勢いがあります。09年の衆院選は自民党への失望感から民主党が勢いで政権交代を勝ち取りましたが、今回の都議選の都民ファの勢いは、この当時の民主党と似たものを感じます。
――自民党都連は、この都議選で大きく力が落ちるのでしょうか。
猪瀬氏 そうでしょうね。現状、公明党が離れたこともあって自民党が過半数を取ることはありません。野党に転落したら利権がなくなり、影響力が大きく落ちます。
――内田氏の影響力はどうなりますか。都議選には立候補せず、自民党候補者として中村彩氏を立てています。
猪瀬氏 代理ですよね。これまで内田氏が出ていた千代田区選挙区は、今回は都民ファの樋口建史氏が優勢です。でも、自民党候補に一定の票がいけば内田氏の面子は保たれます。
内田氏は2月の千代田区長選で自民党の候補が敗れた後、「都議選には立候補しないが、政界は引退しない」とはっきり言っています。都連幹事長も辞任しましたが、今の都連幹事長の高島直樹氏と内田氏は関係が深い。影響力は残すでしょう。
猪瀬直樹氏 プロフィール
いのせ・なおき 1946年長野県生まれ。作家。87年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。96年『日本国の研究』(文春文庫)で第58回文藝春秋読者賞受賞。
2002年、小泉純一郎首相(当時)により道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命。06年には東京工業大学特任教授就任。07年に石原慎太郎・東京都知事(当時)のもと東京都副知事に任命。12年12月に東京都知事に就任し、13年12月に辞任。
現在、財団法人日本文明研究所所長、大阪府・大阪市特別顧問を務める。
著書は『昭和16年夏の敗戦』『天皇の影法師』(いずれも中公文庫)、『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』(いずれも文春文庫)など多数。近著に『民警』(扶桑社)、『東京の敵』(角川新書)。