全国にある信用金庫、「しんきん」が若年層ファンの獲得に懸命だ。全国信用金庫協会は、ミュージックビデオ「しんきんガール」を2017年6月7日、YouTubeに公開した。
「しんきんガール」を歌うのは、「ひがみソング」で知られるシンガーソングライターの関取花さん。監督に乃木坂46や星野源などのミュージックビデオを手がけた山岸聖太さん、ヒロインには映画「イノセント15」に主演した女優、小川沙良さんを迎え、信用金庫のPR活動としては異色のコラボレーションが実現した。
ヒロインに小川沙良、歌は関取花
全国信用金庫協会の広報担当者によると、インターネットでの広報活動には2016年ごろから取り組んでおり、ミュージックビデオは今回で2作目。1作目は「face to face」をテーマに、人と人との密接なつながりを信金職員自ら出演してアピールした。
2作目では、「まさかの展開に暴走する片思いこじらせムービー」と銘打ち、「地味だけど誰からも愛される、『親近』感ある女の子の片思い」の気持ちと、地域密着に徹し、銀行と比べて地味なイメージがある「しんきん」をかけて、「しんきん感って大事でしょ?」と訴えた。
広報担当者は、「若者に信用金庫を、もっと身近に感じてもらいたいと作成しました」と、その狙いを話す。
「しんきんガール」を歌う関取花さんも、「ずっと前からみんなの街にあるのに、少し地味な印象で気づいてもらいにくい信用金庫と、いつもそばにいるのになかなか好きな人に振り向いてもらえない女の子。いじらしくてとても可愛らしい」と、思いを重ねた。6月9日現在、動画再生回数は3000回ほどだ。
「しんきん感って大事でしょ?」
全国の信用金庫にとって、若年層の取り込みは大きな課題だ。広報担当者は「信用金庫全体として、20代前後の若年層の利用率は低く、利用者の多くが年配の方々に偏っています」と、現状を話す。
全国銀行協会が2016年に実施した「よりよい銀行づくりのためのアンケート」によると、信用金庫・信用組合の口座保有率は、18才から29才の男性で9.2%、女性では12.3%となっており、60才から69才の男性の26.1%、女性の25.6%と比べて、男性はほぼ3分の1、女性はおおむね半分程度の割合でしかない。
営業地域が限定されている信用金庫にとって、少子高齢化の影響は大きく、またそれは地方ほど深刻。大学進学や就職を機会に、東京などの大都市へ移り住んでしまう若者も少なくない。
信用金庫では、各地域の企業や大学などと密接な信頼関係を構築して「繋ぎとめ」を図っているという。「しんきんガール」のミュージックビデオも、「その一助になれば」と期待する。
同時に、信用金庫と関取花さんのスペシャルコラボサイトである「Thinking Time♪」も公開。お金に関する悩みに、関取さんと信用金庫の職員が回答している。的確な職員の回答はもちろん、思わず力が抜けてしまう関取さんの回答も話題になりそうだ。