厚生労働省が発表した2016(平成28)年人口動態統計(概数)で、秋田県が厳しい現実にさらされた。出生率や死亡率、自殺率、死因別死亡率のがん(悪性新生物)、脳血管疾患などで全国ワーストとなったのだ。
特に、死因別死亡率のがんは20年連続で最悪な結果と「不名誉」な記録。県ではがん対策に力を入れているが、なかなか成果に結びついていない。
働き盛り世代も死亡率低いとは言えない
2017年6月2日発表の人口動態統計(概数)によると、2016年、秋田県でがんにより死亡した人数は4241人。人口10万人に対する死亡率は421.2となった。過去3年では、死亡人数は毎年4100~4200人で推移しているが、死亡率は年々上昇している。
国立がん研究センターの統計で、がんの部位別に見ると、男性は死亡率が高いワースト3は肺がん、胃がん、大腸がん、女性は大腸がん、肺がん、胃がんの順だ。秋田県の場合はどうか。県健康福祉部健康推進課がん対策室に取材すると、2015年のデータで、男性は肺がん、胃がん、大腸がん、女性は大腸がん、胃がん、肺がんの順だった。
がんの死亡率が全国ワーストの原因について、がん対策室の担当者は取材に対し、全国1位の高齢化率が考えられるとした。2014年の調査で、新たにがんにかかった割合は、70歳以上の男女合計で全体の6割を占めたという。一方で、高齢者を除いた「年齢調整死亡率」でも、秋田県は全国で2番目に高く「働き盛り世代も(がん死亡率が)低いとは言えません」。
そのうえで、がん対策室が挙げたのが秋田県民の特徴的な生活習慣だ。そのひとつが、しょっぱい食べ物を好む傾向。2012(平成24)年国民健康・栄養調査に記載された都道府県別の食塩摂取量の1日当たり平均値を見ると、秋田県は20歳男性で12.3グラムと全国4番目に、女性は10.2グラムで6番目に、それぞれ多い。全国平均値と比べると、20歳男性は1グラムも多かった。
もうひとつは、タバコ。2013(平成25)年国民生活基礎調査では、喫煙率が男性で全国5位の38.2%と高かった。女性は同14位だが、年齢別でみると30代と40代でそれぞれ3位に入る。
中高生を対象にがんの予防授業を実施
長年続く「がん死亡率ワースト」返上のため、行政ではあの手この手で対策を講じてきた。減塩については2016年3月31日、県ウェブサイトで「あなたの食塩摂取量を計算してみましょう」と呼びかけた。まずは自分を知るところから始めるというわけだ。リンク先のサイト上にある各種料理の写真から、自分が食べたものを選んで「計算する」をクリックすると、合計の食塩摂取量が表示される。秋田県では2022年までに成人の食塩摂取量を8.0グラムにする目標を掲げている。
タバコに関しては、禁煙や受動喫煙対策を進めており、2016年3月30日に「秋田県受動喫煙防止対策ガイドライン」を策定、公表した。「全体で受動喫煙防止に取り組む機運を醸成することを目的」として、事業者や医療機関、県民に対して、積極的な取り組みを呼びかけている。
例えば、全国健康保険協会秋田支部(協会けんぽ秋田支部)と共同で行う「受動喫煙防止宣言施設登録事業」では、県内の事業者に、顧客や従業員のために敷地内禁煙か建物内禁煙に取り組む「受動喫煙防止宣言施設」として宣言してもらう。2017年5月22日には、宣言した事業所や施設を県のサイトで公開した。
幼いころからがんについての意識を高めるため、2013年に県が主体となってがんの予防授業を始めた。主に中高生を対象に、医師ががんの基礎知識を講義したり、がん経験者が自らの体験を語ったりした。2017年からは県教育委員会に移管したが、こうした取り組みは全国に先駆けているのではないかと、県がん対策室の担当者は話す。
これらの啓発活動にもかかわらず、なかなか「全国ワースト」から抜け出せないのは、個人の生活習慣を変える難しさにある。長年続けてきた食事や喫煙は、そう簡単にやめられないのだろう。健康生活を送るための地道な取り組みを、粘り強く促していくしかなさそうだ。