休日の朝の起床が少々遅めになることが習慣になっている人は、健康を損なう可能性を高めているかもしれない。仕事の日と休みの日の時間のずれが生む「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」が問題とされる。
米国ではこれまでに、肥満や糖尿病、心臓系疾患の発症リスクを高めることが指摘されていたが、ボストンで2017年6月3日から開かれている米国睡眠学会の年次会であらためて、健康への影響の強さを示す研究結果が発表された。
シフトワーカーのメタボリスクきっかけ
ズムをうまく守れず代謝症候群(メタボリックシンドローム)のリスクを抱える可能性があることが分かったことをきっかけに使われるようになったという。個人が持つ生物学的24時間のリズムと、労働環境などにより組まれる睡眠スケジュールが合わないことを指す。
米国内分泌学会の学会誌に15年11月に発表されたピッツバーグ大学の研究グループによる報告によると、休日の睡眠時間が平日より長く、その差が大きい人たちは、BMI(体格指数)が高いうえウエスト周りも大きく、コレステロール値が高かった。また、空腹時インスリンの値が高く糖尿病の手前とみられる人も多かった。
同大の報告では、ソーシャル・ジェットラグは肥満や糖尿病ばかりでなく、心血管系疾患の発症リスクを高めることも指摘している。
ラグ1時間につき発症リスク11.1%増
ボストンでの米国睡眠学会で新しい研究報告をしたのはアリゾナ大学ツーソン校の睡眠と健康に関する研究プログラムにたずさわるマイケル・ グランドナー博士ら。報告は学会誌の摘要にも採録された。
この研究では、1000人以上を対象にした別の研究から得られた22~60歳の成人984人のデータを検証。アンケートから睡眠サイクルの中ほどの時間(ミッドポイント)を割り出し、休日のミッドポイントから平日のそれを引いて、その差をソーシャル・ジェットラグの程度の評価にあてた。さらには個人別に不眠症の有無、不眠の症状の程度を示す不眠重度指数、また、年齢、性別、人種、民族、教育、環境、雇用形態などのファクターもデータの検討に加えた。
研究によりわかったことはまず、ソーシャル・ジェットラグと不快感、眠気、疲労感のほか、全体的な不調感と関係があること。アンケートで健康状態について3段階の選択で回答を求めたが、ソーシャル・ジェットラグの程度が高いほど自己評価が低かったという。さらにソーシャル・ジェットラグ1時間につき、心血管系疾患の発症リスクが11.1%増すという結果が出た。
研究グループのシエラ・フォーブッシュ氏は「睡眠の規則性が、睡眠に充てる時間とは別に、健康に意義のある役割を果たしていることが分かった。睡眠スケジュールに規則性を持たせることは、心血管系疾患や他の健康問題に効果的なうえ、費用もかからない予防的トリートメントになることが示された」と成果を強調している。
比較的規則正しいと生活をしていると考えている人は、休日の「寝だめ」はちょっとしたぜいたくと考えているかもしれない。ところが、それが習慣になっている場合は注意が必要のよう。週末の夜更かしや遅めの起床だけでも体内時計が乱れ、休み明けにソーシャル・ジェットラグの症状を招くことがあるという。