1971年に過激派「中核派」の学生が警察官を殺害した渋谷暴動事件で、殺人など5つの容疑で指名手配されていた大坂正明容疑者(67)の逮捕を機に、中核派が「ソフト路線」での宣伝攻勢を強めている。
2017年5月末に中核派の機関紙「前進」を名乗るYouTube(ユーチューブ)のチャンネルが開設され、若い男女が記事を読み上げる動画を次々に配信。渋谷暴動事件について「正義の戦い」などと訴えている。明るい色のテロップを入れるなど、若年層にも親しみやすくする狙いがあるようだ。
機関紙の「内容の平易な解説」
大坂容疑者をめぐっては5月19日、大阪府警が広島市内のアジトを家宅捜索した際、警察官に体当たりしたなどとして公務執行妨害容疑で逮捕された。6月9日に警視庁が同容疑者を渋谷暴動事件に関連する殺人など5つの容疑で再逮捕、発表した。
中核派は、大坂容疑者の逮捕を機に宣伝活動を活発化させているようだ。現時点で、中核派の機関紙「前進」を名乗るユーチューブのチャンネルには、パイロット版とみられる「CM」を含む4本の動画が公開されている。同チャンネルについては、「前進」のサイトでも紹介され、リンクも張られている。
5月29日に公開された「CM」では、「中核派が新たな挑戦」と題して、「出演者による紙面紹介」「内容の平易な解説」などを行うと説明。5月31日に公開された初回の番組は日比谷公園で撮影され、自身について全学連委員長と紹介する男性と、法政大学の学生だという女性が、週に2回発行される機関紙「前進」の内容を紹介する、などと説明した。その上で、紙面に展開されている。
「大坂同志は無実!71年渋谷暴動は正義の戦いだ!デッチ上げ弾圧に大反撃を!」 「『殺人罪』でのデッチ上げ逮捕を狙っています。絶対に許すことができません!」 といった独自の主張を読み上げ、その内容が紫色のテロップで表示された。
渋谷暴動事件と大坂容疑者の犯行についても、
「沖縄の怒りに応える戦いであり、首都東京で1万2000人の機動隊の戒厳令体制を打ち破って戦われた、正義の戦いでした。この戦いに恐怖した国家権力が、その報復として行ったのが、警察官殺害を口実にした大坂同志への殺人罪でっち上げです」
などと訴えた。
6月4日公開の第2回番組、7日公開の第3回番組でも、撮影場所を変えたり、記者会見や東京地裁前の演説の映像を交えたりしながら、同様の主張を繰り返した。
公安調査庁「参院選やメディア露出などを通じて存在感をアピール」
公安調査庁が17年1月に公表した「内外情勢の回顧と展望」では、 「参院選やメディア露出などを通じて存在感をアピールした中核派」の見出しで、中核派について
「労働運動を通じた組織拡大を実現するためには、大衆からの理解や支持が不可欠であるとの認識に基づき、引き続き、メディアや市民団体による各種運動などを自派のアピールに利用していくものとみられる」
と解説。
今後も露出を増やしていくとみている。また、6月8日配信の朝日新聞記事などによると、中核派の構成員は約4700人とされている。