リビア、ナイジェリアの動向にも注目
今後の見通しも弱気な材料が多い。OPECなどの減産継続は、だぶつく在庫を減らし、相場を押し上げようという狙いだが、経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油の商業在庫(3月時点)は30億バレルと、OPECが目標とする28億バレル(過去5年の平均)を大きく上回ったまま。足元の需給も、「日量ベースで80万バレル、供給が需要を上回っている」(業界筋)という。もちろん、米シェールオイルの増産のためだが、今回の減産延長に市場が冷ややかなのも、「減産幅拡大の期待を裏切られたから」(同)だけに、相場反転の糸口はなかなか見えてこない。
減産の足並みにも懸念がある。OPEC加盟国ながら、反政府勢力の攻撃などで生産が落ち込んでいるリビアは今の減産の枠外。しかし、その生産量は4月の日量55万バレルから、5月下旬には80万バレルのレベルまで膨らんでいるという。内戦状態で破壊された生産設備の復旧が徐々に復旧しているのだ。同様に減産枠外のナイジェリアも含め、もし両国がフル稼働に戻れば、協調減産の大部分が吹き飛びかねない。
地政学的リスクの相場への影響は読みにくい。直近のニュースはサウジなど中東4か国のカタールとの断交。日本では一枚岩のように思えるサウジ、UAEなど湾岸諸国の中で、イランとの関係が良いカタールとの断交は、かねてイランと対立するサウジが、対イラン強硬派の米トランプ政権発足を受け、イラン封じ込めを本格化させたものだ。
カタールがサウジなどに反発し、協調減産から離脱するようなことになれば、協調崩壊の引き金になりかねない。逆に、カタールの米空軍基地がテロ組織掃討の主要拠点になっていることから、地域の緊張が高まって、原油相場を押し上げる要素になるかもしれない。
国内では、さすがに2016年前半の1バレル=40ドル割れよりは原油価格が持ち直している分、ガソリン代や光熱費などが上昇基調になっている。レギュラーガソリンは1リットル=130円台と、16年春より20円ほど高く、業界では「当分、このレベルが続くだろう」との声が強い。電気や都市ガス料金も上昇しているほか、国際線の航空運賃の燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)が復活しており、今後は運賃自体の値上げを予想する向きもある。