米ワシントン州シアトルの市議会で、加糖飲料への課税が可決されたと複数の米メディアが伝えている。
サンフランシスコやフィラデルフィアなど全米5都市でも、シアトルのような通称「ソーダ税」を導入しているほか、欧州でも砂糖や加糖した食品への課税が進んでいるようだ。
300円の炭酸飲料が420円に
2017年6月6日付のシアトル地元紙「シアトル・タイムズ」電子版の記事によると、税率は一律1オンス(約28~30ミリリットル)あたり1.75セント(約2円)で、例えば2リットル入りの炭酸飲料の場合は代金に約130円が上乗せされることになる。
加糖飲料の定義には市議会でも議論があったようだが、同紙は「ダイエットソーダ、果汁100%ジュース、子ども用の服薬ジュースや医療用シロップ、カフェでバリスタが作る甘いコーヒー」は課税対象外になったと伝えている。この課税で得られる見込みの年間1500万ドルの税収は、同市が進めている「Fresh Bucks」の財源にするという。これは、農家へ補助金を払い野菜や果物を安価に市民へ販売するよう促すプログラムだ。米国心臓協会や米国小児科学会はシアトル市のソーダ税を支持するとコメントし、他の都市でも積極的に導入するよう呼びかけている。実際に、加糖飲料に1オンスあたり1~2セントのソーダ税をかける都市が増えつつある。
こうした動きは米国のみにとどまらない。2016年3月17日には英国が100ミリリットルあたり5グラム以上の糖分を含む飲料に課税すると発表しており、当時この事実を報道した英タイムズ紙はすでにフランスやフィンランド、ベルギー、ハンガリー、メキシコなどがソーダ税を導入済み、フィリピンや南アフリカでは導入予定だとしていた。
この世界的な「ソーダ税ブーム」の発端となったのが、2014~16年にかけて世界保健機関(WHO)が度々行ってきた、加糖飲料消費量削減の勧告だ。
WHOは2000~2015年の間に5歳未満の子どもの肥満が約1100万人増加しており、2014年時点で世界の18歳以上の成人3人に1人が肥満で、糖尿病など生活習慣病の拡大につながっていると発表。1日の摂取カロリーのうち、砂糖が占める割合を10~5%未満に抑える必要があるとし、その方法として「砂糖税」を導入するよう勧告してきた。2016年10月にはより踏み込んだ要請を出し、課税によって得た税収を元に野菜や果物の価格低減や、糖尿病治療や健康的な食事指導プログラムへの予算に充てるよう求めている。
有効性に疑問の声
日本での子どもの肥満率は、文部科学省が毎年発表している「学校保健統計」によると年々減少傾向にあるとされ、成人も厚生労働省の「国民健康・栄養調査報告」ではここ10年ほどは横ばいだ。ただ、2015年には厚労省の有識者会議で砂糖税の導入が提言されており、いずれは課税ということもありえなくはない。
ただし、砂糖税の有効性に疑問を投げかける声は少なくない。英国では発表当時、課税によって肥満者が減少するというエビデンス(科学的根拠)がないにも関わらず、砂糖税が導入されることに疑問を投げかける新聞も存在した。
今回のシアトルでも、課税対象からはダイエットソーダや、エスプレッソをベースに牛乳やクリーム、シロップなどを加える「シアトル系コーヒー」など一部の飲料は外れていることに、「砂糖が含まれていなくてもダイエットソーダの危険性を指摘する研究があるのに、これらを除外することは単なる健康志向のポーズだ」と反対票を投じた議員がいたことをシアトル・タイムズが報じている。同紙の取材に対し、シアトルに本社を置くスターバックスからコメントは得られなかったという。
広がりを見せている砂糖税だが、世界各国で議論を呼びそうだ。