早実の清宮幸太郎が通算100本塁打を放った2017年6月4日、巨人は10連敗。
すると、長嶋茂雄が清宮を褒め、プロ入りの誘い。巨人に来い、と言っているようで...。
踏んだり蹴ったりの巨人
清宮が100本目を放ったのは愛知県小牧市での享栄戦。9回に右中間場外へかっ飛ばした。
「すごいことなのか、実感がわかない」
いつも通り落ち着いた話しぶりだが、やはり顔はうれしそうだった。打席に立つと、スタンドから「あと1本」の声。それに応えた特大アーチだった。
この日を含め、招待試合であちこちから声がかかる。
「早実というより、清宮を呼びたいという感じ」
アマチュア野球担当記者の感想はその通りだろう。見方によっては、見世物ともいえる状況だ。
一方、東京では巨人がオリックスに負けて10連敗。まさに泥沼。広島に3連敗して交流戦に入ったのだが、楽天とオリックスにも3連戦を全て落とした。
「高橋監督は暗い」
と評論家にテレビで言われるなど、踏んだり蹴ったりの状態だ。投手が好投すれば打線が振るわず、打てば投手が崩れるといった最悪のパターンに陥っている。
「プロ野球に入ってほしいね」
そんな折、巨人名誉監督の長嶋茂雄が千葉県佐倉市のイースタンリーグ、巨人対ロッテ戦で始球式。これは長嶋茂雄記念岩名球場のリニューアル式典のためで、大勢のファンが詰めかけた。
終了後、清宮の本塁打の感想をメディアから求められた。
「すごいね。ナンバーワンだね」
そして、付け加えた。
「プロ野球に入ってほしいね」
巨人に来てくれ、とのラブコールに聞こえた。
巨人の連敗記録ワーストは11。これは長嶋が初めて巨人監督になった1975年のときのもので、球団史上初めて最下位になった。
現在の巨人はとにかく打てない。ホームランが出ないものだから相手からすれば怖くないから、若い投手が飲んでかかってくる。長打を打てるバッターが必要とみんなが思っているときに清宮の記録である。長嶋の言葉は意味深いし、清宮にしてみれば、これ以上の喜びはあるまい。
この6月最初の日曜日は、愛知-東京-千葉が一本の線でつながった不思議な一日だった。この秋の出来事(ドラフト会議)を暗示しているのかも知れない。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)