日銀「出口論」の風向きに変化 「時期尚早」一点張りから微修正

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   日銀が続ける大規模金融緩和をいつ、どうやって終わらせるかという「出口」をめぐる議論が活発化してきた。日銀に批判的な野党だけでなく、与党からも早期の備えを求める声が出始め、時期尚早と言い続けてきた黒田東彦総裁の言い回しも微妙に変わってきている。ただ、日銀の政策が順調に進んでいるから出口も考えなければならないという「前向き」なものというより、緩和の副作用、日銀の政策の行き詰まりへの懸念を反映して出口を心配しているという側面も強い。

   金融政策の出口が問題になるのは、大規模な金融緩和を混乱なく手じまいするのが容易ではないからだ。特に日銀は、短期金利をマイナス0.1%に誘導する「マイナス金利」と、国債を「年80兆円をめど」に買う量的緩和を組み合わせた空前の大規模な金融政策を継続していて、2%の物価目標を達成するまで続けると明言している。

  • 日銀本店
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いつ緩和政策をやめるか

   「出口」とは、この緩和政策からの「出口」、つまりいつ緩和をやめるか、ということ。これだけの大規模な政策を突然止めれば、市場が大混乱に陥るから、軟着陸させなければならない。

   黒田総裁就任からの大規模緩和は、2017年春で4年を超え、足元で国債買い入れは年60兆円ペースにスローダウンしているとはいえ、日銀保有国債は3月末で400兆円を超えている。日銀の目論見通り景気が回復し、デフレを脱却し、物価が上がると、金利も上がっていく。日銀が持つ国債の平均利回りは、年約0.3%と過去最低。超低金利で買いまくったからだ。金融緩和の出口が近づき、金利が上がると、国債の価格は下落し、巨額の含み損を抱えることになる。

   さらに問題なのは、日銀の大規模緩和の効果に疑問も声があること。物価2%がなかなか実現しない中、緩和が長引けば、日銀の国債保有はそれだけ膨らみ、出口の軟着陸はさらに難しくなるという懸念だ。

   財務省の試算(2016年10月公表)によると、日本の国債の金利が1%上昇すると、金融機関などの含み損は国内総生産(GDP)の13.5%になるという。GDPが500兆円として、約65兆円、国債の3分の1は日銀が保有しているので、日銀の抱える含み損は20兆円以上という計算。日銀の自己資本(2016年9月末)は7兆6764億円だから、実質債務超過に陥りかねないのだ。中央銀行の信任が揺らげば、企業業績にプラスと言われているレベルを超えた激しい円安、輸入物価の高騰からハイパーインフレへと、日本経済は大混乱に陥らないとも限らない。国債を多く持つ金融機関も損失を抱え、金融不安も再燃しかねない。

   国際的にみると、2008年のリーマン・ショックを経て世界中が金融緩和競争に走ったが、景気回復で先行する米国が利上げサイクルに入り、欧州でも欧州中央銀行(ECB)が利上げ方向に進むとの観測が出ている中、日本だけが大規模金融緩和から抜け出す展望が開けず、取り残される形になっているという事情もある。

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