「カレーライス」などでおなじみの香辛料のターメリックは、健康成分がしばしば取りざたされているが、米国では近年、糖尿病の改善効果に注目が集まっている。
健康についての情報やニュースを扱うウェブサイト、メディカル・ニューズ・トゥデイ(MNT)は、そうした注目に応えようと、同国の学会誌、専門誌に掲載された論文などをもとに、患者がどうやってスパイスを味方にしたらよいかなどをリポートしている
学会誌、専門誌が相次いで研究報告
ターメリックは、ショウガ科のウコンの根を乾燥させたもの。一般には粉末で用いられている。黄色色素のクルクミンを含む。ターメリックはインドの伝統的医学、アーユルベーダや漢方で主要な役割を果たしている。
MNTに2017年6月1日付で掲載されたターメリックと糖尿病をめぐる記事によると、米国ではターメリックとクルクミンを合わせて、これまで、糖尿病のほか、その合併症や過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、がん、消化性潰瘍性疾患、ピロリ菌、アルツハイマー病などに対する効果が研究されているという。
ニューヨークの医学ジャーナル「Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine」に17年5月17日に掲載された、中国の研究グループによる研究報告は、13年間にわたりクルクミンと糖尿病の関係を追ったもの。動物モデルを使った実験でクルクミンはインスリン感受性評価のレベルを改善し「高い血糖値に積極的効果がみられた」とされる。ヒトに対しての効果をさらに調査する必要があるという。
米国糖尿病学会機関誌「Diabetes Care」に掲載された報告は、前糖尿病状態の人たちに9か月間クルクミンを摂取してもらった研究について。結果は、本格的発症に至る可能性が低くなったとしている。同報告によるとクルクミンはインスリンをつくるすい臓ベータ細胞の機能を向上させることが示され、食事に採り入れれば症状の進行を抑制する可能性がある。
「さらに検証が必要」と慎重派も
糖尿病による合併症にも、クルクミンが効果を発揮するものがあるという。患者のなかには、脂肪肝など肝臓になんらかの症状があらわれる場合があるが、クルクミンの長期間摂取により、肝臓の症状が改善したことが報告されている。
ほかにも、神経系や血管系の疾患や認知への影響、白内障、糖尿病の合併症とみられる症状が、ターメリックやクルクミンが持つ酸化防止作用や抗炎症作用により症状軽減の効果があるという。米免疫学会の学会誌に掲載された報告では、1型糖尿病患者にみられる免疫システムの過活動がクルクミンにより適正化されたという。
症状によっては悪化する可能性もあるので、ターメリックやクルクミンの服用を避けた方がいいケースもある。主な場合は、胆のうの疾患や腎結石、貧血症を抱える人たちなど。また長期にわたってターメリックなどを摂取すると、肝臓に影響がある場合があり、また、血糖値を管理する治療の効果を増幅させ低血糖を招く可能性もあるという。
米化学会は、ターメリックやクルクミンの治療や予防などの使用に批判的。同学会誌の「Journal of Medicinal Chemistry」に掲載された論文で研究者らは、クルクミンを摂取して体内に吸収され利用され得るとは限らないし、素材の質がさまざまであるから一般論にはならないと主張。今後さらに詳細な検証が必要としている。