オノマトペを具体的な痛みに比喩表現する装置も
医師にとっても、オノマトペは患者から有力な情報を引き出すキーワードとなるようだ。ファイザーは医師にもオノマトペに関する調査を実施し、2016年10月26日に発表した。調査にこたえた医師169人中、問診時にオノマトペを使用しているのは、「よくある」「ときどきある」を合わせて88.8%にあたる150人。その理由として9割以上の回答者が選んだのが、「患者から痛みの情報を聞き出しやすくなるから」「患者の痛みの表現から痛みの種類が推測できるから」だった。
もちろん「ズキズキ」にも個人差があり、単純に「こういう痛みだ」と100%結論付けられはしないだろう。だが東京都内の内科医に聞くと、医師たちはそれぞれの医療機関で勤務して経験を積み知識を磨くなかで、あまたある痛みの特性を理解、把握していくようだ。それが、患者とのコミュニケーションに生かされる。
近年では、こんな取り組みもある。電気通信大学大学院情報理工学研究科の坂本真樹教授は、オノマトペを定量化する診断システムを開発した。同大学ウェブサイトによると、「ズキン」といった語句を入力した場合、「痛みの度合いを『強い』『鋭い』など複数の要素で数値化し、さらに「ハンマーで殴られたような痛み』『電気が走るような痛み』というように比喩でも表現することで、主観的な痛みを可視化」しているという。将来実用化されれば、患者側で表現しきれなかった「本当の痛み」を見つけ出す有効なツールになりそうだ。