「それがアメリカ流というものだ」
この男性、ジャック・オウム(58)は、ドイツ系アメリカ人で、32年間、消防士として働いてきた。
「米国は最も偉大で、最も自由な国だ。世界をリードしていくために、トランプ氏のような強い指導者と、強い軍隊が必要なんだよ。オバマ政権下で、この国は尊厳を失ってしまった。国民は変化を求めているんだ。トランプ大統領を支持するのは、一生懸命に働き、ちゃんと税金を払い、この国に貢献している人たちだ。それがアメリカ流というものだ(That's the American way.)。働きもしないで、政府が与えてくれることばかり期待している人たちとは、違うんだよ」
胸のバッジは、いつも付けているのか。私は彼に尋ねた。
「そう、いつも旗を付けているよ。アメリカのためにね。私はアメリカ人で、アメリカを愛している。だから、すべての我々の大統領に敬意を表している(I wear for America. I'm an American. I love America. And I respect all our presidents.)。
「オバマ大統領の時にも?」
「もちろんだよ。アメリカを愛しているからだ。そして、それが象徴するものも、愛している(And I love what it stands for.)」
「何を象徴しているのですか」
「自由と正義、そしてアメリカ流、ということだ(It stands for liberty, justice and an American way.)」
そう言い終えるとジャックは、ユグノーの駅で降りていった。そこは、トランプ氏への投票率が8割近い町だった。 (この項続く)(敬称略、随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社
のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓
を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1
弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法
の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育
事情」(ともに岩波新書)などがある。