中国の2017年第1四半期(1~3月)のマクロ経済データが次々と発表され、大部分のデータ(国内総生産=GDP、輸出額、固定資産投資額、工業製品出荷金額、消費者物価指数(CPI)、可処分所得など)の伸び率が上昇基調を回復している。たとえば、GDPは目標値の6.5%より高く6.9%だった。輸出入額の増加は、21.8%であり、日本の設備投資にあたる固定資産投資額の増加も1月の0.72%増から2月0.86%増、3月0.87%増と着実に増えている。
中国指導部の興奮を誘うこれらのデータに対して、日本では懐疑的な見方が目につくが、中国経済当局は「これは新たな景気循環の起点であり、今後ますます良くなって行く」と、いつになく自信をのぞかせている。それはなぜなのか。
第1四半期で年間目標に言及する異例
こうした経済指標をもとに、中国中央銀行(中国人民銀行)の周小川総裁がIMFのサイトに発表した特別声明には「想定した6.5%成長は達成範囲」と書かれている。
この特別声明で注意すべきは以下の3点だ。一つは、3月に李克強首相が全国人民代表大会(全人代)で行った政府活動報告で使った「6.5%前後」ではなく、周総裁が明確に「6.5%」と言ったことだ。
二つ目は、これまで、政府筋が年度目標の実現の可否について見通しを表明するのは第3四半期(7~9月)末で、年間を見通せる段階で表明されてきたが、今回は大幅に前倒しされ、第1四半期が終わったばかりの時点で表明した点だ。
そして三つ目として、声明は年間目標の達成に極めて楽観的で、「達成は有望」とか「達成の可能性は高い」というような余地を残す表現をしていないことも特徴的だ。
ただ、肖捷財政相がIMFで表明した態度は、周氏と比べると、楽観的ながらやや慎重に見え、
「今年の中国経済成長の想定目標は6.5%前後であり、当面の経済成長情勢にかんがみて、この目標達成を確信しており、中国経済は世界経済成長により大きく貢献する」
というものだった。
それより前に、李克強首相も、
「年初2カ月、中国経済は安定成長を維持し、安定の中でよい方向に向かっており、工業用電力消費、鉄道道路水路貨物輸送量、民間投資、輸出入伸び率は全て向上し、企業利益、財政収入も増加傾向にある」
と発言し、極めて楽観的な雰囲気を作った。
李克強氏の首相就任以来、経済は一貫して下り坂で、ようやく長い間期待していた良いニュースで自信が深まり、思わずうっぷんを晴らさずにはいられなかったのだろう。
悲観的な見方が多い日本
中国経済の好調は何が主な推進力なのか?周小川氏はIMF声明で、「主に周期的なトレンドで、商品と原材料の価格が上昇し、世界経済が改善されたもので、中国も例外ではない」と言及した。
周氏はサプライサイド改革の役割も次のように認めている。「原材料価格の反発に加え、中国の過剰生産能力の解消は、さらに価格の上昇を激化させ、上流の原材料業界の業績にはさらに明らかな改善が見られる」。
もし周氏の判断が正確であれば、この復活は主に循環的要素が引き起こしているもので、成長周期が来ているのであれば、どんな業界でも、日本を含むどこの国でも、全て成長できることであり、みんなにとって大いに喜ばしいものである。ただ、それが「継続的なモデルチェンジ、グレードアップ」の効果であるかを証明することはできない。
一方、「中国経済、政策頼みの先の視界不良」(日本経済新聞、5月16日付け)など、日本では、中国経済が好調という見方は、ほとんど「絵空事派」であり、今後中国経済は下り坂をたどっていくとの見方が多い。
李首相の自信と楽観は、本心からのものなのか。2017年後半に開かれる中国共産党第19回代表大会(第19回党大会)を意識してのパフォーマンスなのではないかとの見方も根強い。
中国経済に対して悲観論になりがちな日本のほうが正解なのか。17年の秋には答えが出る。
(在北京ジャーナリスト 陳言)