「餃子の王将」が、異変に気づいたのは2016年の10月ごろだったという。
「売買を禁止しているはずの割引券が、ネットオークションなどで出回っていますよ、と一般のお客さまから通報があったのです」(運営する王将フードサービスの担当者)
売られていたのは、会員サービス「ぎょうざ倶楽部」のメンバー向けに配布した1000円分の割引券だ。メンバーでも年に1枚しかもらえないのだが、それがネット上で大量出品されているのである。
2ちゃんねるでも話題に
あるオークションサイトでは、一人のユーザーが、現在確認できる2017年2月~4月初頭だけで、13件・78枚分の1000円券を売りさばいている。普通の使い方では、こんな大量の割引券を入手できるわけがない。謎の出品として、2ちゃんねるの「王将」関連のスレッドでも静かに話題となっていた。
「これ、おかしくないですか?(中略)1000円券をこんなに量産できるのかな?」
「オレこの人から買ってまだ手元にあるんだけど......やっぱりそうか。どうしたらいいんだろうか」
王将側も警戒を強めていたところ、2017年に入り、実際にある店舗から、「おかしな割引券」が使われた、との報告があった。一見するとよく似ているが、紙質、手触り、色合いなどが違う。
偽物だ。
王将フードサービス社員はフリマアプリ上で不審なユーザーに接触することに。3月9日、実際に1000円券2枚を1777円(プラス手数料100円)で購入、警察に通報した。
出品116枚にすべて買い手が
有価証券偽造・同行使と詐欺の疑いで、京都府警山科署が2017年5月31日逮捕したのは兵庫県在住の44歳の男だった。
男の本業は、なんとカメラマンだ。山科署によれば、男は店長を務める写真店のスキャナーなどの機材を使って割引券を偽造、また出品用の写真も自ら撮影していたという。「本職」の技術を悪用していたわけである。
男はフリマアプリに、総計116枚の割引券を出品していた。王将人気もあってか、売れ行きは「好調」で、すべて買い手が付いていたという。ほかのサイトでの出品も含め、山科署では裏付け捜査を続けている。
これで一件落着――と言いたいところだが、ネットには王将のものも含め、各種割引券などが大量に出回っている。中には今回のような、偽造品が紛れ込んでいることも考えられる。
王将側も不正な割引券の存在を告知、ネットオークションでの購入については責任を持てない、など店頭で注意を呼びかけてきたというが、
「今後は、偽造を防ぐための取り組みもしていかないと......」
担当者も頭が痛い様子だった。