あのアイス・バケツ・チャレンジ発案者が苦境に 年間1億円以上の医療費が支払えない

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   「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の啓発と研究支援を呼びかけた「アイス・バケツ・チャレンジ」の発案メンバーで自身もALSを発症している米国人ピート・フレーツさんが、膨大な医療費が負担となり経済的に苦しい状況に陥っているとする報道が、CNNやFOXニュースなど米メディアで相次いでいる。

   世界中の著名人や政治家まで巻き込む社会運動ともなったアイス・バケツ・チャレンジで集まった寄付金は数億ドルに上るとも言われていたが、その発案者がなぜ医療費で苦しんでいるのだろうか。

  • アイス・バケツ・チャレンジが終わっても患者の戦いは続いている(画像はフレーツさん公式ウェブサイト)
    アイス・バケツ・チャレンジが終わっても患者の戦いは続いている(画像はフレーツさん公式ウェブサイト)
  • アイス・バケツ・チャレンジが終わっても患者の戦いは続いている(画像はフレーツさん公式ウェブサイト)

月の負担額は1000万円以上に

   ALSは神経が徐々に死滅することで筋肉の委縮や筋力低下が起きる病気で、日本では難病に認定されている。ゆっくりと進行していき、発症から数年で自発呼吸ができなくなるが人工呼吸器を装着することで延命ができるものの、有効な治療法や治療薬はない。

   アイス・バケツ・チャレンジは2014年にスタート。ALSの認知度を高め治療法の研究促進を目指すため、バケツにいれた氷水をかぶるか、治療法の研究を行っている米ALS協会に寄付をするか選び、次のチャレンジャーを指名するという運動だった。当初はあまり話題にならなかったが、フレーツさんや数名のALS患者らが氷水をかぶる姿をユーチューブ上で公開したところ一気に広まり、世界中で氷水をかぶる人が現れた。本来は氷水をかぶらない場合、米ALS協会に寄付をするというルールだったようだが、実際には氷水をかぶりつつ寄付を行う人もいたようだ。

   米国はじめ各国のALS協会や患者団体などに寄付が行われ、2016年7月28日に米ALS協会は公式ウェブサイト上に報告。運動から8週間で同協会に1億1500万ドルが集まったとしている。約70%を研究資金に割り振り、ALSの原因となる遺伝子をいくつか特定することに成功した。

   ところが、CNNの2017年5月24日(現地時間)付の記事によると現在フレーツさんは月額7万~9万5000ドル(約940万~1050万円)という膨大な医療費に圧迫され、生活が維持できなくなる可能性に陥っているというのだ。

   実際にフレーツさんは危機的状況なのか、米ALS協会にJ-CASTニュースがメールで確認をしたところ、「フレーツ氏の医療費は年間100万ドル(約1億1000万円)以上になっており、長く維持し続けるのは困難な状況だ」との連絡があった。

   米ALS協会によるとフレーツさんは手足がまったく動かず、自分で唾液を飲み込むこともできないほどの重症者で、生命維持装置をつけた上で24時間体制のケアを受けなければ生きられない状態だ。多少の公的な補助やフレーツさん個人への寄付などもあるが、根本的な負担解決にはなっていないという。

娘との生活を希望し自宅療養

   フレーツさんのホームページによると、米国の大学を卒業後、ドイツのプロ野球リーグ「Baseball-Bundesliga(ベースボール・ブンデスリーガ)」で選手として活躍。現役のときにALSを発症し、現在は自宅での療養を続けている。専門の治療機関に入院すれば補助金額が増え経済的な負担が低減される可能性もあるようだが、5月24日付のボストン・グローブ紙の記事中でフレーツさんの妻は「そんなことはできない」と入院を拒否している。

   米ALS協会もメールでフレーツさんには2歳になる娘がおり、本人は娘と一緒にいることを希望しているとし、

「自宅療養はALS患者のQOL(生活の質)を向上させ、ALSと戦う支えとなる」

   と回答。フレーツさんに限らず、全米で自宅療養を行っているALS患者は金銭的な負担に苦しんでおり、こうした患者たち支援するため「Peter Frates Home Health Initiative」というフレーツさんの名前を冠した基金を設立し、寄付を募っているという。また、フレーツさんの公式サイト「petefrates.com」でもフレーツさん個人に寄付ができる。

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