「マロンちゃま、お利口ちゃんでちゅねえ~」「しし丸クン、おちゃんぽ(お散歩)に行きまちょ~」――。犬や猫を飼っている人なら誰でも、可愛いペットについ「赤ちゃん言葉」で話しかけてしまう経験はあるだろう。
しかし、いったい犬はどう思っているのだろうか。赤ちゃん言葉を喜んでいるのか。実験で犬の心理を追究した研究がまとまった。その結果は――。赤ちゃん言葉に反応するのは子犬だけで、大人の犬は全く無視していることがわかった。
「なんて、いい子なの!」の呼びかけに成犬は無視
このユニークな研究を行なったのは、フランス・リヨン大学の生物学者ニコラス・マッチェボン教授らのチームだ。「英王立協会紀要B:生物科学」(電子版)の2017年1月10日号に発表した。
同協会のプレスリリースによると、マッチェボン教授らは30人の女性に協力してもらい、犬に呼びかける「赤ちゃん言葉」を録音した。「ハーイ、かわいい子ちゃん!」「いい子はどの子かな~」「こっちにおいで、いい子ね」「おいで、甘いパイをあげるわ」「なんて、いい子なの!」といった言葉だ。女性たちには犬の写真を見ながら、ゆっくりした高い調子で呼びかけるパターンと、普通に調子で「脚本」を読みあげるパターンの2種類を喋ってもらった。
マッチェボン教授らは、米ニューヨーク市の動物保護センターで、10匹の子犬と10匹の成犬(若い犬から老いた犬まで様々な年齢)にこれらの録音を聞かせ、反応をビデオテープに記録した。そして、1匹ずつの行動を詳しく分析すると――。高い調子で呼びかける録音を聞かせると、10匹の子犬のうち9匹が興奮してほえまくり、録音スピーカーの周りを走り回った。中には、老いた犬に聞かせている場所にまで走ってくる子犬もいた。そして、大人の犬はというと、10匹全員が高い調子にも普通の調子にも、まったく反応しなかった。スピーカーが音を流すと、素早くチラッと見て、その後はスピーカーを無視した。