ウッズの場合も最悪、生死にかかわったかも
米食品医薬品局(FDA)は2013年10月24日付の声明で、バイコディンの危険性に警鐘を鳴らした。バイコディンは「ヒドロコドン」という強い成分を含んでいることから、09年に米麻薬取締局(DEA)が米保健福祉省(HHS)に対して、より規制が厳しいカテゴリーに変更するよう要請していた。
バイコディンのようにヒドロコドンを含む鎮痛薬は、「オピオイド系」の一種とされる。このオピオイド系鎮痛剤の常習性や乱用が問題になっていることを、16年4月23日付「ワイアード」電子版が報じている。
オピオイド系鎮痛剤はもともと、植物のケシからつくられた。ケシの実から採取されるアヘンは麻薬だ。だが19世紀には、アヘンからモルヒネやコデインといった鎮痛剤が開発された。さらにその後、アヘンに含まれるアルカロイドからオキシコドンが、コデインからヒドロコドンがつくられた。そのヒドロコドンとアセトアミノフェンを合成したのが、バイコディンだ。
1990年代以降、米国では慢性病に対してオピオイド系鎮痛剤の処方が増えていった。苦痛を和らげるための効き目は強力だが、副作用もまた強い。薬物依存になりやすいというのだ。記事によると、米国でオピオイド系鎮痛剤により中毒状態になっているのは190万人、1999年~2014年の期間で16万5000人が亡くなったという。先述のFDAの声明も、オピオイド系鎮痛剤の乱用による中毒が米国の一部で広がっていることを憂慮して出されたのだった。
ウッズ選手が「バイコディン中毒」だったかどうかは、分からない。手術後の痛みを抑えるため、正しく服用していたとも考えられる。ただし本人が語っていたように、飲み合わせによっては、最悪の場合生死にかかわる事態になっていた可能性も、ゼロではない。