米プロゴルファー、タイガー・ウッズ選手(41)の逮捕は、世界に衝撃を与えた。アルコールか薬物の影響下による車の運転を疑われたが、検査の結果アルコールは検出されなかったという。
ウッズ選手は釈放後に出した声明で、処方された薬の飲み合わせで予期せぬ強い影響が出たと釈明した。実は処方薬のひとつは、米国ではタレントなどが依存症になるなど、中毒性がある薬として有名だった。
米人気ドラマ「ドクター・ハウス」でおなじみのシーン
米ニューヨークタイムズ電子版は2017年5月30日付で、ウッズ選手を逮捕したフロリダ州ジュピター警察による検査資料をウェブサイト上で公開している。検査は現地時間17年5月29日の朝4時22分に開始。話し方や動作は遅く、眠そうだと書かれている。服用薬として記載されたのが「Soloxex」「Vicodin」「Torix」「Vioxx」の4種類で、左ひざとアキレス腱手術の治療のためとある。
この中で注目されるのが「Vicodin」(バイコディン)だ。日本では販売されていないが、米国では一般に処方される鎮痛薬。もちろん適切に使用すれば効果が期待できる。だがこのバイコディンを誤用し、薬物中毒になるケースがかねてから問題になっているのだ。
「MTVジャパン」電子版2013年6月28日付の記事によると、世界的なヒップホップミュージシャンのエミネムが、薬の乱用で命を落としかけた様子を報じている。「初めてバイコディン(鎮痛剤の一種)を飲んだ時、"あ~"っていう気分だった。全てがメロウになっただけでなく、どんな痛みも感じなかったんだ」。その後、複数の薬物を混ぜて服用するようになった結果、ある日危篤状態に陥って病院に救急搬送された。「もし病院に行くのが2時間遅れていたら、俺は死んでいた」と振り返っている。
2014年10月に出版された「依存症ビジネス」(ダイヤモンド社)の中に、「バイコディン乱用」に関する詳しい記述がある。米人気コメディードラマ「フレンズ」に出演した俳優マシュー・ペリーは、バイコディン依存治療のリハビリ施設に2度も入っていた、ミュージシャンのコートニー・ラブはこう言った。「やってない人なんている? 成功した人なら、だれでも口に放り込んでいるわよ」――。
日本でも放映された米人気ドラマ「ドクター・ハウス」では、主人公のグレゴリー・ハウス医師がバイコディンを口の中にグイっと押し込んだり、1錠を宙に放り投げてパクっと口に入れたりするシーンが何度も登場する。同書ではこれを踏まえて、「『ドクター・ハウス』の最初の脚本が書かれていた2003年には、バイコディンの娯楽用薬物としての効果は、その鎮痛剤としての効果と同じくらい、すでによく知られていたのだった」と説明している。
有名人だけではなく、一般社会にも乱用者が広がっている様を、同書では指摘した。