若者の死因で最も多いのは自殺だという報道について、サッカー日本代表MF本田圭佑(30)が「他人のせいにするな!」などと発言したところ、ミュージシャンの米津玄師(よねづ・けんし、26)が「言ってることがよくわからない」と口を挟んだ。
米津は本田の発言内容に「とても危険な振る舞いだなあと思いました」と否定的な見解を示している。
「成功に囚われるな!成長に囚われろ!」
本田は2017年5月30日、時事通信の「若い世代の死因、自殺最多=15~39歳『深刻』―政府白書」という同日付記事のリンクを張りながらツイートした。記事は30日に公表された自殺対策白書(2017年版)の内容を取り上げている。自殺者数は減少傾向にあるものの、15~39歳の死因は自殺が依然として最多で、白書では「若い世代の自殺は深刻な状況にある」との見方を示している。国際的にみても、全年代を合わせた10万人当たりの自殺者数は、G7諸国の中で日本が最も多かった。
これに対して本田は「他人のせいにするな!政治のせいにするな!!生きてることに感謝し、両親に感謝しないといけない。今やってることが嫌ならやめればいいから。成功に囚われるな!成長に囚われろ!!」と発言した。本田はツイッター開始から数日後の24日、「自分なりの価値観や哲学などを日本語でも共有していきたいと思ってます」と宣言しており、今回の投稿はその一環なのかもしれない。
ツイートには他のユーザーから大量の返信が届いた。「ほんと日本人って成功に囚われてますよね...」との意見もあったが、目立ったのは「考えが足りていないと言わざるを得ません」「あまりにワケわからないこと言っている」と本田に否定的な意見だった。また「本田さんのツイートが正しいか間違ってるかは自分のなかで決めればいい」といった声もあった。
そうした中、米津が本田の投稿内容に「言ってることがよくわからない」とツイートし、2万2000以上の「いいね」を集めるなど大きく注目された。続くツイートで米津は「人生や親に感謝するのはいいと思うんだけど」と部分的には認めつつ、「少なくとも元の記事には他人や政治のせいにして自殺した人の様子なんてひとつも出てこないし、そこからの『成功に囚われるな、成長に囚われろ』という言葉もどこから出てきたのかよくわからないっていうのが正直な感想です」と疑問を呈した。
「『自殺する人間像』を自分の中で固定して、それを自明なことのように話す」
米津はさらに「『自殺する人間像』を自分の中で固定して、それを自明なことのように話すのはとても危険な振る舞いだなあと思いました」と本田の考えを否定した。「もちろんあれが彼なりの激励であり優しさであるのはわかってるつもりです」と譲歩しつつ、「ただ自殺で知人を失った経験がいくつかあり、思うところがあったので、一応突っ込んどこうと思った次第です。おわり」と自身の経験と重ねながら物申した。
米津は12年にインディーズデビュー、22歳だった13年にメジャーデビューし、以来テレビCMやアニメとのタイアップ曲も数多く手がけている。15年には『Bremen』で日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞した。イラストレーターとしての一面も持ち、17年4~5月に開かれた福岡アジア美術館でのルーヴル美術館特別展では、米津のイラストが特別展示された。
ツイッターで米津は、創作活動以外の発言も少なくない。死生観に関するものもあり、12年11月1日には「『自殺という表現はイメージが悪いので自死に』という記事をみかけたが、どんな場合であれ懲戒の意味を込めて自殺という表現であるべきだと思う。外部に責任を問うたり死んだ人間を慈しんだりするのはその後じゃないか」と主張した。14年3月1日には「死に対する哲学を持ってないと生きることもままならない」との考えを述べている。