運動のあとにチーズやヨーグルトなどの乳製品を食べると、運動だけを行うより筋力が増加し、特に高齢女性の生活習慣病の予防にもつながるという研究を信州大学の能勢博教授らのチームがまとめ、科学誌「プロスワン」(電子版)の2017年5月17日号に発表した。
乳製品をとるのは運動終了後できるだけ早い時間がポイント。体内のタンパク質合成活動が活発になっているため、このタイミングを利用しタンパク質を吸収すると、効率的に筋肉量をアップできるという。
速いウォーキングの後にチーズとヨーグルト
同誌の論文要旨によると、研究チームは「インターバル速歩」という運動を続けている女性を対象に実験を行なった。インターバル速歩は、ほぼ全力で速歩きする「速歩」と、ゆっくりとした歩きを3分ごとに交互に行うハードなウォーキングだ。インターバル速歩を続けている女性37人(平均年齢66歳)を次の3つのグループに分け、5か月間インターバル速歩を行なってもらい、運動の直後に乳製品を摂取することで体に現れる効果を調べた。
(1)1日に5セット(1セットは速歩3分+ゆっくり歩き3分)の運動だけを行なうグループ。
(2)1日に5セットの運動の後に軽めの乳製品(チーズ1個か、カップのヨーグルト1個のどちらか=計60キロカロリー)を食べるグループ。
(3)1日に5セットの運動の後にたっぷりの乳製品(チーズ1個とカップのヨーグルト2個=計171キロカロリー)を食べるグループ。
その結果、何も食べないグループは5か月後の筋力はほとんど変わらなかったが、たっぷりの乳製品を食べたグループは筋力が約8%増加、軽めの乳製品を食べたグループも約3%増加した。また、たっぷりの乳製品を食べたグループは、生活習慣病の原因となる慢性炎症反応を引き起こす「NFKB1」と「NFKB2」という遺伝子の働きが、それぞれ平均で約29%と約44%抑えられた。軽めの乳製品のグループでは、「NFKB2」の働きだけが約10%抑えられた。
能勢教授らは論文の中で、「乳製品を食べる量が多いほど、筋力アップと炎症反応抑制効果が高くなることが明らかになった。これは糖尿病などの生活習慣病予防につながる可能性が示された」とコメントしている。