「食の欧米化」といえば健康にはよくないというイメージがあり、野菜や魚などを主体にした健康的な食事に改善すべきだという話はよく聞くだろう。
しかし、そんなイメージに疑問を投げかける研究結果が国立がん研究センターから発表された。肉類やパン、コーヒー、乳製品が多い「欧米型」の食事でも全死亡リスクが低下していたというのだ。
最も効果があるのは「健康型」の食事だが
国立がん研究センターは全国10か所に住む40~69歳の男女約8万人を90年代から追跡調査し続けており、このデータを元に日本人の生活習慣と、がんや脳卒中、心筋梗塞などの病気との関係を分析する「多目的コホート研究(JPHC研究)」を定期的に発表している。
2017年5月24日に同センターが発表したのは、食事パターンと死亡リスクとの関連を分析したもので、約8万人を14.8年追跡した調査結果にもとづいているという。
研究ではまず調査開始から5年後に行った食事調査票の結果から、134種類の食品や飲料の摂取量の多さに応じて被験者たちを3つの食事パターンに分類。
まずは「健康型」。野菜や果物、いも類、大豆製品、きのこ類、海そう類、脂の多い魚、緑茶などが多かった食事。
次いで「欧米型」。肉類・加工肉、パン、果物ジュース、コーヒー、ソフトドリンク、マヨネーズ、乳製品などが多い。
最後に「伝統型」で、ご飯、みそ汁、漬け物、魚介類、果物などが多かった食事。
さらに、各食事パターンの中で摂取量や食事頻度に応じた食事パターンスコアが「低い」「普通」「高い」「とても高い」に分類し、追跡期間中に発生した全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡との関連を分析している。
「健康型」では高くなるほど全死亡リスクは低下しており、脳血管疾患死亡リスクは「低い」人に比べ「高い人」で約40%、循環器疾患や心疾患死亡リスクも30%近く低下していた。全死亡リスクも約20%低下しており、顕著な差が見られなかったのはがん死亡リスクのみとなっている。
意外なのは「欧米型」。「健康型」ほどではないが各死亡リスクが10~20%程度低下していたことだ。悪影響を与えそうな循環器疾患や心疾患でも低下が見られる。
「伝統型」は死亡リスクとの関連が確認されておらず、少なくとも今回の研究での食事の分類法に則れば、死亡リスク低下が期待できるのは健康型の食事か欧米型の食事ということになる。しかし、なぜこのような結果になったのか。
欧米人と同じ食べ方はしていない?
国立がん研究センターは発表の中で「肉類・加工肉は、全死亡のリスク上昇との関連が報告されている」として、欧米型は一般的に健康的ではないと考えられていることを認めている。しかし、その摂取量には日本人と欧米人で大きな差があり、国連食糧農業機関によると、日本人は1人当たり年間48.8キログラムの肉を消費するのに対し、米国人は117.6キログラムと倍以上違う。
また、コーヒーや牛乳、乳製品などが持つ健康に好ましい効果によって、他の食品の負の効果が打ち消されリスクが低下した可能性も考えられるという。欧米型の人は塩分摂取量も少ない傾向にあり、これもプラスに働いているかもしれない。
ただし、この結果が明日からピザやハンバーガーだけ食べればいいということを意味しているわけではない。そもそも食事パターンの分類は摂取量をもとにした134品目に限定されており、それ以外の食品の影響などは加味してない。年齢層も限定しており、同センターも分析しきれていない要因がある可能性を認め、研究結果を「慎重に解釈すべき」としている。