政府は2017年5月29日、北朝鮮が同日早朝に弾道ミサイルを発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下させたと発表した。発表によると、発射時刻は5時40分頃。一般国民に発射が伝わったのはその30分以上後だった。
「全国瞬時警報システム」(Jアラート)は、災害情報に加えて、ミサイルが「日本の領土・領海に落下する可能性がある可能性があると判断した場合」にも使用されることになっているが、今回も使用されないまま。飛行機や船舶への警報が出たのは6時過ぎだった。ミサイルが飛行したのは6分程度で、警報が出た時には日本海着弾から15分以上が経過していたことになる。
5時40分発射の6分後に着弾、聯合ニュースの「速報」は6時16分
北朝鮮が弾道ミサイルを発射するのは今回が17年に入ってから9回目で、5月14日、21日に続いて3週連続だ。
日本政府の発表によると、弾道ミサイルは北朝鮮東岸の元山(ウォンサン)から5時40分頃に発射され、最大100キロ程度の高度で約400キロ飛行。佐渡島から約500キロ、隠岐諸島から300キロのEEZ圏内に落下したとみられる。EEZ圏内に落下させるのは16年8月、9月、17年3月に続いて4回目。ロイター通信などによると、米太平洋軍司令部は、発射されたのは短距離弾道ミサイルで、6分間ほど飛行したとみている。
政府の発表によると、5時45分に安倍晋三首相は「情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと」など3点の指示を出した。その1分後に着弾したことになる。
一般の国民にミサイルの情報が伝わったのは、それからさらに30分後だ。 6時16分に韓国の聯合ニュースが韓国語で韓国軍合同参謀本部の話として
「北朝鮮、未明に元山から飛翔体発射」
と報じたのに続いて、日本では、TBSが6時19分に「北朝鮮が弾道ミサイルと見られる飛翔体を発射 韓国国防省」とテロップで速報。NHKは6時22分に「政府 北朝鮮からミサイル発射 排他的経済水域内に着水の可能性」と、EEZ圏内着弾の可能性を報じた。首相官邸も6時22分、EEZ内着弾の可能性を災害・危機管理情報のツイッターアカウントで発信した。
国内の航空会社に警報が伝わったのは「6時2分」
菅義偉官房長官は6時43分過ぎから開いた記者会見で、ミサイル発射を
「航空機や船舶の安全確保の観点から、極めて問題のある行為」
などと批判した。
国土交通省によると、EEZ圏内への着弾が予想される場合は、内閣官房から国内航空会社に自動的に警報が伝わるほか、国外の航空会社向にはノータム(NOTAM)と呼ばれる注意情報を出す。国土交通省によると、今回、内閣官房から国内の航空会社に連絡があったのが6時2分だった。
海上保安庁によると、船舶向けにナブテックス(NAVTEX)と呼ばれる注意報でミサイル発射を伝えたのは「6時台」だった。
「ミサイルを発射したら、すぐ作動するようにできているわけではない」
5月14日に発射されたミサイルはEEZ圏外に着弾。この日の会見では、菅義偉官房長官は
「今回の事案は、発射したミサイルが我が国に飛来する可能性がないと判断したためにJアラートなどは使用していない」
と述べていた。5月21日に発射されたミサイルも、着弾はEEZ圏外だった。翌5月22日の記者会見では、「Jアラート作動せず」などと報じられることについて、記者から
「内閣官房が情報を発信しないと判断してJアラートが作動しないということだと思う。『Jアラート作動せず』という表現は、受け取り方によっては本来作動すべきものが作動しなかったと誤解を与え、無用な不安感を与えるとの指摘がある」
と指摘し、菅氏も
「我が国に直接の危害がないから作動させないだけの話。『作動せず』という表現はおかしいのではないかと私は思う。ミサイルを発射したら、すぐ作動するようにできているわけではない。逆に混乱を生じるのではないか」
と応じていた。
今回は久しぶりにEEZ圏内に着弾したが、5月29日に3回開かれた官房長官会見では、Jアラートは全く話題にのぼらず、前回3月6日のEEZ着弾の際も菅氏は
「必要な場合にはJアラートなども使用して適切に情報を伝達してまいります」
と述べるにとどめた。