日経は「危い二兎追い」と指摘
事故対応費のうち4兆円の除染費は、再編などを通じた企業価値の向上、つまり株価の上昇で、国が持つ東電などの株式売却益で賄うことになっているが、「絵に描いた餅に終わりかねない」。
東電問題の新聞報道は、各紙の原発へのスタンスを色濃く映す。脱原発の「毎日」は5月12日朝刊解説記事に「原発事故処理 提携に壁」「柏崎再稼働も見通せず」の見出しが躍り、同じく「朝日」も「多難の再建計画」「見通せぬ再稼働」「再編に他電力反発」と書く。一方、原発推進の「読売」は「原発で連携強化」「柏崎刈羽メドたたず」とは報じるが、東電の計画の内容解説中心で、計画通りに進まなければ、「新たな国民負担につながる可能性もある」と指摘した程度。また、同じ原発必要論でも「日経」は「収益力向上と賠償・廃炉 危い二兎追い」「『机上の案』続く難路」と、計画の実効性に大きな疑問符をつける解説記事を掲載した。
社説(「産経」は主張)で直接取り上げたのは「産経」(13日)と「朝日」(14日)。「産経」は電力料引き下げの視点の必要を主眼とし、「高止まりする電気料金の引き下げに努めることを忘れてはならない。それは、電力の安定供給と並び、同社に課せられた使命だ。その実現には、運転が長期にわたって停止している柏崎刈羽原発の早期再稼働が欠かせない」として、「政府は再稼働を東電任せにせず、新潟県への働きかけを強めるべきだ」と、政府にも発破をかける。
これに対し、「朝日」は「安全対策の徹底が先決であり、再稼働に頼らず必要な資金を稼ぎ出す方策を考えるべきだ」と主張し、「東電がその責任を果たせないなら、国がさらに前に出るしかない。(略)東電と政府は、国民の厳しい目を忘れてはならない」とくぎを刺している。
両紙は同じ国の責任を論じるのでも、方向は正反対だ。