発達障害の人が見る・聞く驚きの世界 最新科学と当事者が明かす向き合う方法(中編)

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「りんご」の音読1つでも脳は複雑な処理を

   続いて、「読み書きをすることが非常の困難」という特性を持つLD(学習障害)の人の場合。「昔、小学校のクラスにこんな子はいませんでしたか?」というナレーションとともにアニメが映し出された。国語の授業の朗読の時間。先生に指名され、タダシ君が教科書を音読しようとする。「い、い、い...」と、つっかえてしまう。「いちばん...」という言葉がスムーズに読めない。クスクス笑うクラスの子たち。タダシ君は恥ずかしさと緊張でますます読めなくなる。先生が「なぜ家で練習してこなかった!」と怒った。泣きそうになるタダシ君。

   なぜ、タダシ君はスラスラと読めないのか。最新研究で、LDの人の脳の仕組みが明らかになった。たとえば、私たちが「りんご」という単純な言葉を音読する時にも、脳は次の段階をふむことがわかった。

(1)教科書の「りんご」という文字の形を目で見る。
(2)脳の記憶にある「辞書」の中から、「りんご」という文字の形を選び出し、教科書の「りんご」と形が合っているかどうか照合する。
(3)次に、その「辞書」に載っている読み方=「ri・n・go」(リンゴ)と、意味=「赤い果物」を読み、理解する。
(4)脳から口に「この文字は『ri・n・go=リンゴ』と読むのだよ」と指令が行き、「りんご」と発音する。

   これだけ複雑な過程を経て、「りんご」と音読する。ところが、LDの人は、脳の情報処理がうまくいかず、(2)の脳の辞書と照合する時に時間がかかってしまう。だから、声を出す時につっかえるのだ。

   タダシ君本人は音読のシーンをどうとらえていたのか。実写映像を公開した――。タダシ君は教科書を見た。「いちばんしまいに...」という字が飛び込んできた。「い・ち・ば・ん? この字はどこで区切るのだろう? 『いち』か?『いちば』か? い、い、いち...」。クスクス笑う声が聞こえてきた。周りが気になってしかたがない。体が熱くなる。文字がぼやけてきた......。

   タダシ君にも実在モデルがいる。LDの当事者で、現在51歳の忠さん。特別支援学校で技術の授業を担当している。今も読み書きが困難だ。書類の文字を、1つ1つ指で追いながら何とか読んでいる。

   忠さん「文字を読むことに全神経を注いでいます。もう頭がフル回転です。とても疲れます」

   MCの井ノ原快彦「こんなにも大変だったとは。確かに子どもの時にいましたね、こんな子たちが。アイツ、どうして家で勉強してこなかったのか、やる気がないなと思った自分を思い出しました」

   MCの有働由美子アナが、番組に寄せられた約4000通のメールから当事者の声を次々と紹介する。

「私もADHDです。よく忘れ物をしてはパニックになりました。友だちからキモイと言われました」
    「ADHDを友だちにカミングアウトすると、翌日から子ども扱いされました」
    「私はADHDです。ADHDは個性の1つと言いますが、個性が過ぎると周りに迷惑をかけます。どこまでが個性で、どこからが障害なのか、迷っています」
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