東芝の半導体事業の売却先をどこにするかなど日本では大きく議論されているさなか、2017年5月14日、ソフトバンク傘下の世界的半導体メーカーARMと中国の投資ファンド厚安創新基金が合弁会社設立における協力の覚書に署名したと中国メディアの『財新』が報道した。
同合弁会社の本部は深センに設けられ、ARMがチップの設計に必要な知的財産権や技術サポート、トレーニングを提供するが、過半数の株式は中国側が保有するという。
モバイル、IoT、人工知能に投資
今回、ARMが中国で合弁会社を設立する目的は、中国側が持ち株の過半数を保有したうえで、国内で重要なチップコアの知的財産権の開発とサービスのプラットフォームに育て上げることにある。今回の署名は協力の覚え書きの段階で、関係各方面の持ち株比率など詳細な点はまだ発表されていない。
同業界のサイトである「集微網」の報道によると、合弁会社はARMのグローバル・イノベーションシステムと技術基準を頼りに、中国市場のニーズとを結合させ、複雑な計算や図形処理、人工知能、ネットワークセキュリティなどさまざまな集積回路設計の知財製品の研究開発o販売を狙っている。
厚安創新基金は17年1月に中国投資有限責任公司、シルクロード基金、シンガポールのテマセク、深圳深業集団、厚朴投資そしてARMが共同で設立した。投資規模は8億ドルで、ARMと厚朴投資が管理を担当する。同基金の目標はARMのグローバルな産業システムと結合し、モバイルネットワークやモノのインターネット(IoT)、人工知能など多くの基幹分野で潜在力を秘める技術企業への投資に力を注ぐことだ。
ARMは「携帯の心臓」と称賛され、低コストで低消費、かつ高性能のチップ開発に取り組んでおり、全世界にあるスマートフォンやタブレットの99%に同社のアーキテクチャが使われている。すべてのiPhoneおよびiPadにもARMのチップが使われており、キンドルやアンドロイド端末などにも同様に同社のアーキテクチャが使用されている。