年齢が最大の敵
気になるデータがある。30歳を過ぎてから横綱になった力士は短命ということだ。
琴櫻(昇進32歳1か月)は8場所(番付上は9場所)で引退。三重ノ海(31歳5か月)8場所。旭富士(30歳0か月)9場所。隆の里(30歳9か月)がもっとも長かったが、それでも15場所。この横綱たちは31歳から33歳で引退している。
稀勢の里が今年3月に横綱になったとき30歳6か月。初土俵から89場所、新入幕から73場所。大関31場所という超スローの頂点だった。
30歳というのは、力士としては晩年とはいわないまでも後半生。年齢が最大の敵なのはどのスポーツも同じである。横綱昇進のときがもっとも強い時期だとしても30歳になってからそれを保ち続けるのは厳しい。
この場所が始まる前、休場した方がいい、という指摘が関係者を含めて各方面からあった。それでも出場に踏み切った稀勢の里はファンの期待に応えたい一心だったのだろう。ファンの拍手の重さを知っていたことを思うと切ないとしか言いようがない。
「力士生命に響くのでは...」
これからは期待と同時に不安の見方もたびたび出るだろう。どんな状態でカムバックするのか。角界だけでなく今年後半のスポーツ界最大の関心事となった。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)