高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「共謀罪」を統計学の視点でみると... トレードオフ理解し極論は避けよ

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両者のバランスを確保し、両者のリスクを減少させることが必要

   統計学では、何もしない前提では、「第一種の過誤」と「第二種の過誤」はトレードオフ(二律背反)の関係で、「第一種の過誤」を小さくしようとすると、残念なことに「第二種の過誤」が大きくなってしまう。

   これは、共謀罪の議論の時にも出てくる。共謀罪の反対論者は、特別な対策なしを前提として、テロリストを取り逃すというミスを小さくしようとすると、一般人を冤罪逮捕するミスが大きくなるという。

   一方、共謀罪のまじめな賛成論者は、一般人の冤罪逮捕もテロリストの取り逃がしの両方のリスクを減少させるように、種々の対策を提案する。その一つが、維新のような、取り調べの可視化やGPS捜査の制度化である。取り調べの可視化は一般人を冤罪逮捕するリスクを減少させるし、GPS捜査の制度化はテロリストの取り逃がしリスクを減少させる。

   ちなみに、共謀罪反対論者のいうように、何ら対策もなしに、一般人の冤罪逮捕のリスクをゼロにしようとすれば、統計学的な帰結としては、テロリスト取り逃しリスクが際限なく大きくなってしまう。これでは社会の安定を確保できないだろう。

   一般人の冤罪逮捕と、テロリストの取り逃がしの二つは、トレードオフ関係があることをきちんと認識して、両者のバランスを確保し、両者のリスクを減少させることが必要ではないか。そのためには、修正案の優劣で争うべきで、廃案は論外である。

   二つの間のトレードオフが理解できないと極論に走るのは、原発即ストップと同じ構造である。どうりで、極端な賛成と反対の論者の面子をみるとまったく同じなわけだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)など。


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