10~20代前半の若者に人気の交流サイト(SNS)の中で、写真投稿サービスのインスタグラムが心の健康にネガティブな影響を与えている――。
そんな調査結果が2017年5月18日に英国の専門機関、王立公衆衛生協会(RSPH)によって発表され、BBCなど英主要メディアも報じている。
ユーチューブのみ高評価「新たな知識を得られる」
RSPHの調査は、ウェブサイト上で「#StatusOfMind Social media and young people's mental health and wellbeing」というリポートとして公開されている。調査方法は同協会が若者の公衆衛生意識を高めるために取り組んでいる啓蒙活動「The Young Health Movement(YHM)」を通じ、英国で人気の高い「ユーチューブ」「ツイッター」「スナップチャット」「インスタグラム」「フェイスブック」の5つのSNSを利用している14~24歳の若者1479人にアンケートを送り回答してもらうというもの。
アンケートで問われた内容は、各SNSを利用するに際して「他のユーザーが流している健康情報は信頼に値するか」「専門家などの健康情報が見られるか」や、利用時に「不安感や緊張感を感じるか」「うつ症状(自分自身を不幸に感じるなど)は感じるか」「孤独感を感じるか」「自分の肉体に劣等感を感じるか」と多岐にわたる。これらの質問に対し「かなり悪い(-2点)」「悪い(-1点)」「どれでもない(0点)」「良い(1点)」「とても良い(2点)」で回答し、総スコアによってSNSを評価している。
その結果、最も高スコアで「ポジティブなSNS」とされたのはユーチューブ。自己表現ができ、新たな知識を得られると評価が高い。ところが2位のツイッター、3位のフェイスブック、4位のスナップチャット、5位のインスタグラムはすべて「ネガティブ」と評価された。リポートの中でRSPHはインスタグラムが若者の不安感や孤独感、劣等感に与えるネガティブな影響が最も大きく、いじめなどに発展するケースも少なくなかった指摘する。
英国の調査なので、日本でも同じ結果になるとは言い切れない。参考のため、インスタグラム特有の理由を探ろうと、ツイッターとインスタグラムを頻繁に利用している20代の日本人女性にJ-CASTヘルスケアが話を聞いた。すると、「やはり写真がメインだからでは」と答えた。
「文字では実感が湧かなくても、写真で見ると違いますね。『ストーリー』というたくさんの写真をまとめてアップできる機能もあって、(生活が)充実していそうな華やかな写真を大量に見せられると、少しイラッとすることもあります」
自分も対抗していい写真を撮らなければいけないのでは、と考えてしまうこともあるという。「嫌なら辞めろ」と言うのは簡単だが、こうしたSNSは友人とのコミュニケーションツールとなっているため難しいという事情もあるとも話した。
「有名人の写真なら割り切って見られますが、友達の写真とはつい比較してしまいます。落ち込んでいるときに見ると『自分はこんな生活じゃないな』と感じることも......」
実際の姿よりよく見せようとした画像は「加工」と表示を
RSPHは英国の16~24歳のうち91%が何らかのSNSを利用しており、利用を禁止したりSNSを規制することは現実的ではないと指摘。SNS運営会社側に対し、若者の心に与える影響を低減させるため、精神衛生上の問題や健康問題を抱える若者には一時的に利用を休止するよう促す、実際の姿よりもよく見せようと加工された画像には「加工画像」と表示する、SNSの利用がネガティブな影響を与える可能性をポップアップなどで注意喚起するといった対策を行うよう求めている。
同時にSNSのポジティブな面もあると認めた。コミュニケーションツールとして誰かに励まされる、新たな友人を作る、自己表現の場となるといった効果を評価した。全否定しているわけではないのだ。
リポートの中で、筆頭報告者もシャーリー・クレーマー氏は「SNSは人間関係やアイデンティティーを形成する重要な要素となっている」とコメント。社会や環境のように精神衛生に関係するものとして捉え、ポジティブな影響を受けられるよう「あり方」を考える必要があるとしている。