「ドッキュ~ン!」。不覚にもまたまた早撃ちのガンさばきを見せてしまったアナタ。ピストルを見つめながら、シュンとなる。――「早漏」は「ED(勃起障害)」「短小」と並ぶオトコの3大悩みの1つだ。
その「早漏」にウェットティッシュに含ませた麻酔薬が効くという研究が、2017年5月13日に米国ボストンで開かれた米国泌尿器科学会で発表された。痛み止めや乗り物酔い予防にも使われる、ありふれた薬だという。本当ならうれしいが。
早漏の世界的な基準は「1分以内」だが...
どんな症状だと「早漏」というのか。医学的な早漏の定義については国際基準がある。2008年に開かれた第103回米国泌尿器科学会総会で、それまで諸説あった早漏の世界的な基準が定められた。以下の3つの項目のうち1つでも当てはまると早漏になる。
(1)膣に挿入する前、または挿入して1分以内に射精してしまう。
(2)膣に挿入後に自分の意志で射精を遅らせることができない。
(3)十分な挿入により相手を満足させることができないために、セックスが苦痛、フラストレーションに感じる。
「1分」という厳しい(?)条件が課せられたが、「時間は関係ない」と考える専門医も多い。早漏治療が専門の「青山セレスクリニック」のウェブサイトを見ると、「早漏とは、時間・運動回数などにとらわれず、単純に射精をコントロールできず、女性の満足より早く男性が射精してしまうこと」と書いてある。パートナーの「満足」次第で時間は変わってくるのだ。
さて、米国泌尿器科学会で研究を発表したのは、米コーネル大学と女性の健康関連会社「ヴェル・へルスケア」の合同チームだ。同学会のプレスリリースによると、臨床実験に使ったのは同社が開発したウェットティッシュ型薬剤「ベンゾカイン・ワイプス」だ。「ワイプス」(Wipes)には「ぬぐう」「ティッシュ」の意味があり、中に局所麻酔薬「ベンゾカイン」(アミノ安息香酸エチル)を4%に薄めて染み込ませた。ベンゾカインは約100年前から広く使われている麻酔薬だ。歯科医が抜歯の時に使用するし、虫刺されや刺し傷の痛み止め薬、吐き気を抑えるため乗り物酔い予防の胃腸薬にも含まれている。
研究チームは、18歳以上の早漏気味の男性21人を、ベンゾカインを染み込ませたウェットティッシュ型製剤を使う15人と、プラセボ(偽薬)を使う6人の2つのグループに分けた。そして、パートナーとセックスをしてもらい、射精までの時間をストップウォッチで計測した。その結果は次のとおりだった。
持続パワーが3倍に、2分以上の頑張りも80%に
(1)実験開始時点での射精までの平均時間は、ベンゾカイン組が1分14秒、プラセボ組は1分25秒だった。ところが、2か月後の平均時間を測ると、プラセボ組が1分34秒と、ほとんど変わらないのに対し、ベンゾカイン組は3分52秒と3倍以上に延びていた。
(2)また、射精までに2分間以上頑張った人の割合をみると、プラセボ組は1か月後で33%しかいないのに対し、ベンゾカイン組は1か月後で60%、2か月後には80%に達した。
(3)さらに、射精のコントロールやセックス時の満足度を聞いても、ベンゾカイン組はプラセボ組に比べ、はるかに改善効果がみられた。
この結果について、コーネル大学のリドウィン・シャブサイ博士はこうコメントしている。
「これまでも早漏に対する局所麻酔薬の研究は行なわれてきましたが、明確に有効性を示した研究はありませんでした。米国では、早漏治療薬に局所麻酔薬が使用されることは限定的でしたが、今回、初めてベンゾカインの有効性と安全性を検証することができました」
また、学会の広報担当のトビアス・コッホラー医師も「ベンゾカインが早漏の症状を改善する革新的な治療法として有望であることが示された」と期待のコメントを発表している。