たびたび問題になる安倍晋三首相の「私邸通い」問題が、北朝鮮の弾道ミサイル発射を機に、再びクロースアップされている。歴代の多くの首相は首相官邸のすぐ隣にある首相公邸(千代田区)に住んできたが、安倍氏は富ヶ谷の私邸(渋谷区)から車で15分ほどかけて官邸に通勤している。
政府は「大切なことはリーダーが適時適切な判断を行えるかであって、どこに所在するかではない」と問題がないことを主張しているが、災害時には官邸にたどり着けなくなる可能性があるとして、野党は「危機管理上あり得ない」などと批判している。
1次内閣時代に住んで懲りた?
今の「首相公邸」は1929年に首相の職場にあたる「首相官邸」として建てられた。2002年4月に73年間の官邸としての役割を終えた後も「歴史の証人」として保存が決まった。リフォームを経て、05年4月から首相の住居にあたる「首相公邸」として利用されている。
安倍氏も第1次内閣(06年9月~07年8月)時代に8か月ほど公邸に住んだことがあるが、12年12月の第2次内閣発足以降は、国会会期中に短期間滞在する以外は、基本的には私邸から官邸に通っている。第1次政権の時、公邸の住み心地の悪さを思い知ったことが原因だとの指摘もある。
この「私邸問題」は、17年5月18日の参院予算委員会で問題化した。民進党の福山哲郎議員が、5月14日早朝に北朝鮮がミサイルを発射した際の時系列を
「5時28分に発射されて、(安倍氏の)官邸着が6時41分、もっと言うと、私邸を出たのが6時半」
と指摘しながら、たまたま今回は問題が起きなかったものの、
「例えば首都圏直下の大地震とかあったら、(首相の)車列が本当に官邸までたどりつけるような状況か、道路の状況がどうなっているか分からない」
「総理が1時間かかって私邸を出ている。これが本当にいいのか」
と危機管理のあり方について問題提起。野上浩太郎官房副長官は
「緊急事態に対応できるように万全の体制を敷いている。大切なことは、危機に際して適時適切な判断を行って、事態をマネージすることができるかどうかであり、どこに所在するかということでない」
などと繰り返した。