2017年5月20日の中日対広島戦(ナゴヤドーム)で、中日の先発投手・又吉克樹が審判に何事かを訴え、試合が一時中断するハプニングがあった。この出来事をめぐって、インターネット上では、ある「デマ情報」が急拡散。又吉本人が説明に追われる騒ぎとなった。
「デマ」の内容は、広島ファンが「レーザーポインター」を使って、又吉の投球を妨害したというもの。なぜ、こんな根拠のないデマが急速に広まったのか。その「発信源」をJ-CASTニュースが追った。
広島ファンへのバッシングが過熱
ハプニングは、中日1点リードで迎えた4回表に起きた。ここまで3イニングをほぼ完璧に抑えていた又吉が、広島の一番バッター・田中広輔と対峙した際に、審判に何事かを訴え出たのだ。
この影響で試合は一時中断。球審と三塁審判が集まって、スタンドの方を指さして「電気!電気!」と呼び掛け始めた。その後、何らかの対応が取られたのか、試合はそのまま再開した。中断していた時間は約1分ほどだった。
この場面は試合中継でも放送されたことから、ツイッターを中心に「何があったの?」などと話題に。さらには、試合の最中から徐々にツイッターで、
「広島ファンがレーザーポインターで又吉の投球を妨害した」
といった真偽不明の情報が広まっていった。
こうした情報が出回ると同時に、それを信じたネットユーザー中心に広島ファンへのバッシングが過熱。ツイッターやネット掲示板には、
「レーザーポインター当てるとか何を考えてるんやろ... カープファン最悪」
「広島ファンの方、敵チームのピッチャーにレーザーポインター当てたり、必要以上に野次ったりするの、やめていただけませんか」
「広島ファン出禁にしてしまえ。ほんまクソすぎる」
といった激しい批判が次々と寄せられる事態となった。
又吉本人が「真相」説明の神対応
だが、広島ファンがレーザーポインターで投球を妨害したという情報は、真実ではなかった。又吉本人が5月21日夜のツイッターで、
「昨日の試合で中断したのは自分にレーザーポイントを当てた。との情報が流れていますがそんな事はなく記者席のライトが消えてなかったので審判の方が消灯する様に指示を出した為です」
と否定したのだ。その上で、すでにライトを消し忘れた記者からは謝罪を受けたとも明かしている。
続く投稿で又吉は、「(妨害行為をする)ファンは中日、広島だけではなく全球団に居ないと思っています」とした上で、
「これ以上デマが広がりファン同士が仲悪くなるのではなく、お互いのファンが楽しく球場で応援し交流出来るようになって欲しくてツイートさせて貰いました」
とツイートの真意を説明している。こうした又吉の投稿には、
「正しいことを知らせて下さって本当にありがとうございます」 「又吉さん、ファインプレーです!」
といった感謝のコメントが広島ファンを中心に相次いでいる。
中日ドラゴンズ広報部の担当者も5月22日夕、J-CASTニュースの取材に対し、
「試合中に観客がレーザーポインターを使用したなどという事実はありません。あの場面は、主審が記者席に対してライトを消すように指示を出したのです」
と話した。
スポーツキャスターの一言が...
では、なぜ今回のようなデマが広がったのか。J-CASTニュース編集部が調べてみると、2つの「発信源」が見つかった。まず一つは、現地で観戦していたツイッターユーザーの一人が、「(審判が)観客を注意しに行った」という趣旨の呟きをしたこと。
そしてもう一つは、この試合を生中継していたWEB配信サイト「スポナビライブ」での実況と解説のやり取りだ。この中断シーンを受けて、この日の実況を務めていたスポーツキャスターの生馬アイザックさんは、
「たまにあるんですよね、ナゴヤドームでも。レーザーポインターみたいなものを持っているファンが居たりとか、あれが実際に審判の目に当たったりすることがあるんですけど......」
とコメント。これを受け、解説の元中日の田尾安志さんも「お客さんみたいでしたね」と漏らしていた。
2人は決して、広島ファンがレーザーポインターを使って投球を妨害した、と断定してコメントしたわけではないが、審判がスタンドの方を指したこともあいまって、こうした会話の内容が曲解されて独り歩きし、今回のデマが広がる一因となったようだ。ツイッターでは、
「どこかの中継が発した言葉からとんでもないことに」
「(スポナビ実況のせいで)結構騙された感じになった」
などとして、誤解を招くようなコメントをした実況・解説を「軽率だ」と非難する声も上がっている。